「少年犯罪は厳罰化しても減少しない」説への異論
少年法を改正し、より厳罰化を目指そうとの動きがあります
これに対して、弁護士ドットコムは「厳罰化しても少年犯罪は減らない」との主張を掲げています
ただ、弁護士ドットコムの「犯罪抑止のための厳罰化は無意味」だとする論旨は、どうにも問題の根幹を読み違えているのではないか、と指摘したくなりブログで取り上げます
「少年犯罪は厳罰化しても減少しない」 少年法改正の動きに弁護士が「異論」
2000年の少年法改正でも凶悪事件は減っておらず、厳罰化が抑止力になっていないと、弁護士ドットコムは指摘します
しかし、今回の少年法改正は建前として「凶悪事件を抑止するため厳罰化を盛り込む」のでしょうが、本当の目的は「重大な犯罪行為に対して相応の刑罰を課す」ところにあると自分は受け止めます
つまりは殺人、傷害などの重大な少年犯罪に対し、20年未満の有期刑を言い渡せるようにしようとの狙い(従来は15年が上限)が重要であり、犯罪抑止を本気で期待しているとは思いません
背景にあるのは被害者遺族の感情を重視すべきだとする世論でしょう
もちろん、これは有期刑の話であって、死刑や無期懲役は別です
たとえばストーカー殺人を犯した18歳の少年に対し、従来なら懲役15年の刑を課すのが法律上の限界でした。これを懲役20年にしようというわけです
弁護士ドットコムは犯罪抑止を論じていますが、厳罰化の狙いがそこにない以上、無駄な立論です
さらに弁護士ドットコムは、「単に被害感情から厳罰に処するという発想では、国家が被害者に成り代わって復讐を果たすということを意味するのではないでしょうか」と、厳罰化への疑義を提起しているのですが、これも大いに疑問です
被害者による敵討を禁止している我が国ですから、国家が被害者に代わって報復するという意味合いで刑罰を課しているとも解釈できるのであり、それを否定する必要はないと考えます
記事は「そして、犯罪を犯してしまった者に対しても、単に懲役を科すだけでは不十分でしょう。二度と犯罪を犯すことがないように、治療的なものも含めた専門的な対処をすることで、再犯防止を重視していく仕組みが必要だと考えます」と結んでいるわけですが、近代的な刑事司法制度が導入されてから100年以上、再犯防止策があれこれ模索されてはいるものの、未だ決め手がない現状であり、これからも模索が続くものと考えられます。つまりは簡単に実現などしないのです
「治療的なものも含めた専門的な対処」として様々な試みがされています(薬物依存から立ち直ろうとするプログラムなど)が、効果についてはまだがっきりとしたものはなく、同時に受刑者処遇のためにどれだけの費用を国費として支出するかという問題もあります
要するに受刑者に更生プログラムを実施するにはお金がかかるのであり、犯罪者1人に年間数百万円も費やす再犯防止策を国民が支持するか、否かという問題です
現状では、「犯罪者なのだから、不自由で劣悪な環境の中で懲らしめを受けるのが妥当」だとする考えが大半を占めるのではないでしょうか?
つまり受刑者の処遇にあまりお金をかけるな、という発想です
すべての受刑者に快適なワンルームでエアコンの効いた生活を与え、高度で専門的な治療プログラムを実施するべきだ、と考える国民は極少数でしょう
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