「明日ママ」擁護派の言い分への疑問
日本テレビ系列で放送中のドラマ「明日、ママがいない」への批判が高まる一方、ドラマを擁護する業界人も少なくありません
芸人岡村隆史の擁護論を先日取り上げたところですが、これをフォローする意見に疑問を感じましたので再び言及します
意見を寄せているのは片岡英彦という人物で、元日本テレビの社員との経歴の持ち主であるため、テレビ業界を代弁しているとも受け取れます
ナイナイ岡村隆史の「日テレドラマ批判」への苦言を支持する理由/ドラマの「作家性」について
(前略)
テレビというメディアの編成権はテレビ局にあります。視聴者にもスポンサーにもありません。制作者がこのドラマを通じて最も伝えたい「テーマ」や「メッセージ」は「子供たちの視点から『愛情とは何か』ということを描くこと」であり「子供たちを愛する思いを真摯に描く」ことです。
こんな批判が今後も続くならば、こうした社会的視点でのドラマは、今後ますます制作されなくなります。「誰からもクレームがこない」ことをテレビ局もスポンサーも最優先するようになります。そして「ホームドラマ」「恋愛ドラマ」などで、無難な設定のドラマ(物語)ばかりが放送され、少しでも視聴者からクレームがくる可能性のある「社会的視点(社会批判)」を持ったドラマは、企画段階で潰されるようになっていくのでしょう。
これはもう論外の発言です。視聴者はドラマについて意見を述べるな、批判するなと要求しているわけです
「社会派ドラマ」だから黙って見てろ、と決めつけるのはテレビ業界人の思い上がりであり、視聴者の批判を勘違いしているのでしょうか?
表現の方法に問題があるがゆえに批判されているのであって、視聴者は何も「社会派ドラマ」を否定しているわけではありません
「子供たちを愛する思いを真摯に描く」ことがドラマのテーマだと述べているところも不可解であり、むしろ「子供たちが逆境の中でいかに成長し生き抜くかを描く」ことを目指しているのではないかと自分は感じたのですが(ドラマの脚本をすべて読んだわけではないので単なる想像です)
そして、あえて最後に問いたいのは、仮にこのドラマの原作が太宰治、三島由紀夫、大江健三郎であったとしても、このように作品の一部「シーン」の是非をもって、作品性自体が否定されるような社会に日本はなっていくのでしょうか?
これも随分と見当外れな指摘です
このドラマの原作者は太宰治でもなく、三島由紀夫でもなく、大江健三郎でもありません。何を思ってこんな蛇足を書き足したのか、理解に苦しみます
最後に何を問うつもりだったのでしょうか?
上でも述べたように視聴者はドラマの一部シーンだけを槍玉に挙げ、ドラマ自体を否定しているわけではないのに、随分と勘違いをしているようです
当然、文豪と呼ばれる作家の原作のドラマであっても、ドラマの表現方法に問題があれば批判が寄せられます。「文豪太宰治の小説のドラマ化だから視聴者は黙って見てろ」とでも言いたいのでしょうか?
テレビ業界人の思い上がりと勘違い、その器量の狭さを存分に表明したような意見です
視聴者はドラマのテーマを否定しているのではなく、作り方(表現方法)を問題視していると何度指摘しても理解できない人たちのようです
例えば大人になった女性の回想として養護施設での体験を振り返る、というシーンから入ることも十分に可能だったわけであり、脚本家やディレクターの手腕にこそ問題がだったと片岡英彦は考えないのか、と言いたくなります
養護施設で育ったこどもたちと直接関わる仕事をしてきた人間として、テレビ業界人の唱える作家性など笑い話のレベルに映ってしまいます
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