中国メディア 「中国アニメ界になぜ宮崎駿は生まれないのか」

引退を表明した宮崎駿ですが、中国のメディアがその存在を引き合いに出し、中国のアニメ界に彼のような巨匠が誕生しないのはなぜか、と問う記事を書いています
しかし、毎度のようにその視点・発想はかなりずれています

中国アニメ界には、なぜ宮崎駿監督のような巨匠が生まれないのか?―中国メディア

記事では、「資金力を失い、中国のアニメはクリエイターたちの自己満足の道具となってしまった。また国がアニメに『教育的意義』を求めるため、アニメ作品は対象年齢が下がり、深みのないものとなって見る人を引き付けることが難しい」と現状を嘆いてみせます
中国政府がアニメに「垂訓」を求め、こどもの教育に資するべきだとの方針を掲げているのは事実ですが、だからといって幼児向けの稚拙なアニメばかり作るようになったのは中国のアニメ業界の構造的な問題ゆえでしょう
要するにテレビで放映される(作品が売れて金になる)ものが幼児向けアニメ番組であり、補助金も出るからとの理由で幼児向けアニメ制作に群がった結果だと言えます
テレビ放映に依存せず、劇場公開で制作資金を回収しようとの狙いで大人の鑑賞にもたえるアニメを作る選択もあるわけですが、そこまで冒険できる制作会社は多くないのでしょう。資金を確保するのが難しいために
だからといって子供向けの稚拙な内容でお茶を濁すのは、クリエイターの力不足や発想の貧しのためでもあります
子供向けのアニメだから「深みのない作品になり見る人を引き付けることが難しい」などと言えば、「アニメは子供向けのものだ」と日頃から発言してきた宮崎駿が激怒するでしょう
この記事を書いた中国人記者は根本的なところが分かっていないのであり、よって記事はもっぱらお金の話ばかりです
そのためか、記事の結びでは「アニメには多くの資金が必要で、リスクが大きい。中国政府は補助金ではなく、アニメ企業が利益を得られる状況を用意するべきであり、文化がより開放的になった時、『中国の宮崎駿』が生まれるだろう」と、辻褄が合わない結論を書いています
アニメ制作会社が補助金に依存せず自立できる(作品を売って収益を確保できるようになる)ことと、文化の開放が「宮崎駿を生み出す」との結論がどう結びつくのか、首を捻ってしまいます
強いて解釈すれば、国の規制が撤廃されて自由に創作できる環境が整えばアニメーターの才能が発揮され、中国にも宮崎駿のような巨匠が生まれるとの発想のでしょうか?
ですが、これも大間違いです
以前、当ブログで取り上げた中国メディアの記事では、「国の政策によってアニメ業界には多くの人材が育っており、あとは業界をリードする宮崎駿のようなスターが登場すれば日本のようにヒット作が次々と生まれるようになる」といった趣旨の発言をしていました
確かに宮崎駿はヒット作を生み出す監督ですが、日本のアニメ産業が宮崎駿に依存しているかのような認識は大間違いです
毎週テレビで放映されているアニメの制作を担う多くのアニメーターや演出家、脚本家が日本のアニメ産業を担っているのであり、1人や2人のスター監督に依存しているのではありません

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