「日本の伝統と現代を融合させた宮崎駿」と誤解する中国メディア
いつも紹介しているように中国系メディアが発信する日本アニメの論評は、誤解や誤認だらけで、しかも辻褄が合わない主張が展開されます
アニメの論評すらまともに語れない国に、優れたアニメーションが作れるはずがないと思うばかりです
今回もまた、宮崎駿を取り上げ理解不能な論評を披露しています
突っ込みどころだらけの内容なのですが、こんな記事を精査もせず掲載する姿勢にも呆れてしまいます。日本でこんな記事を書こうものなら、必ずデスクから書き直しを命じられるはずです
日本の伝統と現代を融合させた「宮崎駿」という巨匠―中国メディア
宮崎駿の作品には日本を舞台にしていないものもあり、「日本の伝統と現代を融合させて表現するのに成功した」と決めつけるのは無理があります
さらに、以下の指摘も作品を読み誤っているといわざるを得ません
独特な主題の表現以外に、宮崎アニメのキャラクターは米国式のスーパーヒーローではなく、どこにでもいるような普通の少年少女だ。こうした「普通のキャラクター」は性格が善良で単純、心がきれいで、多くの人の共感を引き出しやすい。「天空の城ラピュタ」の「シータ」や「となりのトトロ」にでてくる「メイ」と「サツキ」、「千と千尋の神隠し」の「千尋」などがこれにあたる。
ナウシカやもののけ姫、「紅の豚」のポルコ・ロッソを「どこにでもいるような普通の少年少女」と決めるけるのは大間違いです
また、宮崎駿を「グローバルな精神性があふれている」と書いておきながら、続いて日本独自の精神風土の影響や、アジアの文化に深い造詣があるかのような指摘をしています。グローバルな精神性と、特定地域の精神風土は対立する概念であり、記者が何を言いたいのかさっぱり分かりません
宮崎監督がこのような成功を収められたのは、独特な芸術性による所が大きいだろう。彼の作品には、グローバルな精神性があふれているだけでなく、独自の東洋的な視点が備わっている。もしかしたら、日本の伝統と現代文化が共存していることに影響されているのかもしれないが、宮崎作品のテーマの由来はバラエティーに富み、アニメキャラクターの設定も非常にこまやかだ。
こんな記述を赤ペンで修正しない編集長がいるとすれば、何が書いてあるのか分からない人たちなのでしょう
さらに記者は以下のように綴ります
宮崎作品はアジア人の静かな生活にある美しい瞬間を正確にとらえ続けてきた。「となりのトトロ」のストーリーの背景には大自然の息吹にあふれた日本の田舎の風景が描かれている。みずみずしい青い空、そこが見通せるほど透き通った小川、その美しさは人々が理想に描くこの世のものとは思えない桃源郷だ。
桃源郷と決め付けていますが、「トトロ」に描かれているのはかつて日本のあちらこちらで当たり前のように見られた農村風景です。大自然の息吹があふれた風景が日本のそこかしこに存在していた事実を、中国人は理解できるのでしょうか?
「日本は狭苦しい島国で、資源はなく、活路を求めるためにアジアを侵略した」というのが中国政府の公式見解であり、豊かな自然に恵まれた美しい風土であるとは認めていませんし、認めたくもないのでしょう(それを認めてしまうと、彼らの社会主義的な歴史観が崩れてしまうからです)
こうして宮崎アニメの数々の特徴を並べ立てているのですが、あまりに大雑把で偏った視点であり、何も指摘できていないのと同じです
宮崎アニメ成功の理由は多面的で、精緻なアニメカラー、広範なテーマ、美しく思いがけない着想、そして作者は巧妙なやり方で作品に文化精神への反省、婉曲的に美しく幻想的なシーンを観客に提供する。
宮崎作品はアニメ映画に対する狭隘な認識を変革し、アニメ映画という特性を十分に生かして不思議な創造空間を生み出した。そして同時に作品に深い思想テーマを与えた。これは彼の作品に鑑賞だけでなく、人間的な深みも備えさせた。新世紀の中国のアニメ関係者は、宮崎監督から学び、インスピレーションを得ることもできるだろう。
思い切りむちゃくちゃな「まとめ」で締めくくっています
中国のアニメ関係者が宮崎駿の作品から何も学んでいないのは、彼らが作り出す作品が証明しています
さらに、こんな記事を書いて堂々と掲載している中国メディアも、アニメを語る教養も論理も持ち併せていないのが明らかです
中国の大学の3分の2には、マンガやアニメを専攻する学科が設けられています
そこで学生たちが何を学んでいるのかは不明ですが、メディアにこのような記事が登場するところを見れば、おそろしく低レベルな教育・研究しか行われていないのではないかと勘ぐりたくなります
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