山口連続殺人事件を考える ネットで広がる同情論
山口県周南市金峰の集落で5人が殺害され、民家が放火された事件で、犯人とされる保見光成(ほみ・こうせい)容疑者(63)が逮捕されました
産経新聞では、「ネットに奇妙な同情論が広がっている」と記事にしています保見容疑者が田舎の閉鎖的な人間関係に圧迫され、追い詰められ、殺人に至ったという見方をする者が多く、むしろ殺害された被害者たちにこそ非があったのではないかとの主張が展開されているためです
犯人への同情論が広がる現象はまま起こりえるものであり、決して珍しいもので
はありません。古くは連続射殺事件で起こした永山則夫死刑囚のケースがありますし、最近では秋葉原の無差別殺人事件を起こした加藤智大被告のケースがあります
永山則夫はその悲惨な生い立ちが強調され、社会の犠牲者であるがごとく祭り上げられました。加藤智大は派遣切りに遭った孤独な若者とのイメージ広がり、有識者やジャーナリストが彼を擁護する発言を繰り返しました
ただし、加藤智大が事件についての供述を始めると、「派遣切りに遭った孤独な若者」とのイメージは崩れ、犯行動機も身勝手極まりない理由と判明し、加藤智大を擁護していた者たちが勝手な主義・主張を彼の行動におっかぶせていただけとバレてしまいました
今回の同情論はどうなのでしょうか?
田舎の陰湿ないじめ、差別といったものを挙げ、保見容疑者が追い詰められたがゆえに犯行に至ったとの見方自体は決して間違っていないのでしょう
ただ、被害者たちの側にも言い分はあります。村の暮らしを守るため、互いに協力し支え合うため、保見容疑者の素行を何とかしようと思い、それが対立を引き起こす結果に結びついたとの解釈も可能です
裁判になれば弁護側があれこれと事例を並べ、保見容疑者がいかに追い詰められていったかを立証しようと試みると思われます
検察側は被害者側の証言を並べ、保見容疑者の素行に問題があったと強調するのでしょう
ただ、そうやって互いの非を指摘し、批判したところで事件の意味に辿り着けるとは限りません
都会で暮らしていた保見容疑者にとって、故郷は自分を温かく迎え入れてくれる場ではなく、圧迫と誹謗・中傷が繰り返される悪夢のような土地であり、期待を裏切られたとの思いで一杯だったのかもしれません
期待に反する現実の中で保見容疑者が何を思い、殺意をふくらませるに至ったかを考える必要があります
安易な同情論からは何も生まれないのですから
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