発達障害で姉を刺殺した男性 控訴審で減刑も

アスペルガー症候群のため30年あまり引きこもり生活を続けてきた男性が、姉を逆恨みして刺し殺すという事件が平成23年7月に発生し、被告である大東一広に1審の大阪地方裁判所は求刑の懲役16年を上回る懲役20年の判決を言い渡していました
しかし、この求刑を上回る量刑に疑問が提起され、大阪高等裁判所で控訴審が行われた結果、あらためて懲役14年の判決が下されています
アスペルガー症候群である被告の事情を考慮し、減刑する判断です
大東被告は姉を殺害するほど憎んでいたのでしょうが、姉を失った現実を果たして受け入れられるのかな、と思ってしまいます
刑務所を出るのが10年先になるのか、14年先になるのかは分かりませんが、そのときになって身内を失った現実を味わうのかもしれません
自分が通勤に利用しているバスターミナルの近くに市の福祉センターがあり、そこへ通う障害者を度々見かけます
中には成人に達した知的障害者を福祉センターへ連れて行く女性の姿もあり、事件の姉弟と姿が重なります
両親が年老い、姉は「この先、弟の面倒を自分がみていかなければいけない」との決意を抱いて弟と向き合っているのでしょう
介護に疲れた表情が浮かんでおり、その負担の重さがにじみ出ています
ただ、悲しいことに姉のそうした決意が弟に伝わるとは限らず、本件のような逆恨みから弟が姉を刺し殺すという事件が起こり得るわけです
裁判所の量刑判断はともかく、何とも心が重くなってしまう事件です
30年も自宅で引きこもっているという状態は、それだけ家族が長く負担を背負っていたのであり、大変な30年だったと思うばかりです
専門の療育施設があれば、そこで自律的な生活訓練や基礎的な職業訓練を実施し、家族の負担を減らせるのですが
身体障害者、知的障害者に加え、アスペルガー症候群のような発達障害者を受け入れる施設の拡充を国・地方自治体は検討してほしいものです

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