幻の名作「黒い砂漠」修復上映

世間ではアカデミー賞の話題があれこれ報道されていますが、自分としては関心の対象外なので、別の話題を取り上げます
フランチェスコ・ロージ監督の映画「黒い砂漠」(1972年公開)はカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞し、名作との評価も高いのですが日本ではDVDも発売されず、視聴困難な幻の作品となっていました
その「黒い砂漠」がリプリントによって修復されたのを受けて、銀座にあるのシアター「GUCCI CINEMA VISIONARIES」は、3月2日(土)から4月28日(日)までの期間、無料で上映されると報道されています

グッチ銀座で幻の名作映画『黒い砂漠』を上映。マーティン・スコセッシの映画修復プロジェクトにより復活

「黒い砂漠」は日本のテレビでも2度、放映されており、自分も見ています
ただし、上記の記事で「実在の人物と出来事にもとづいた、スリラー映画」と書いているのは大間違いであり、サスペンス映画と表現すべきでしょう
第二次大戦に敗れたイタリアで、戦後の復興を担ったやり手の実業家エンリコ・マッティの謎の死をドキュメンタリー風に追った作品です
マッティはイタリア国営石油会社ENI(上記の記事ではEMIになっており、これも間違いです)の経営で辣腕を振るい、当時は英米の石油メジャーが市場をほぼ独占していた状況に逆らい、共産主義国であるソ連からの原油を輸入するという破天荒な手段で独自の路線を貫いた人物です
そのため石油メジャーから恨みを買い、謀殺されたとの噂があります
実際にはシチリア島を訪問したマッティが、その帰路に搭乗した飛行機とともに墜落死したのですが、映画ではシチリア島でのマッティの最後の日々をカメラで追い、あたかもドキュメンタリーを見ているかのような印象を与えます
イタリアの政財界に人脈を持ち、それがゆえに数々の利害の対立に巻き込まれていたマッティですから、殺害されるだけの理由は山ほどあったと言えます
それを監督は、「なぜエンリコ・マッティは殺されたのか?」という視点でひたすら追いかけるのです
大学の図書館でエンリコ・マッティの評伝を見つけて読んでいただけに、この映画は単なるエンターティメント以上の意味があり、もう一度見たいと思う作品です
4月末までの上映期間中に是非とも東京へ行き、映画館のスクリーンで「黒い砂漠」を鑑賞したいものです
カンヌ映画祭で賞を獲得した作品といえども必ずしも興行的に成功するわけではないため、最近では受賞作が日本で公開されないまま、という事態も珍しくありません
全国のミニシアターには是非とも頑張ってもらい、貴重な作品を一つでも多く鑑賞できる機会を与えてもらいたいものです

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