ブラック企業名を非公開 擁護する国の姿勢
過酷な労働を強いられた結果、自殺に追い込まれたり辞職を余儀なくされるケースは労災認定を求める事件として報道される機会もありますが、その大部分は世間一般の目に触れることもなく、従業員を使い捨てにするブラック企業の名が表に出ません
「全国過労死を考える家族の会」が大阪労働局に社員が過労死の認定を受けた企業のリストを開示請求したところ、「企業名を公表するのは問題がある」として資料の企業名は黒く塗りつぶされた状態で開示されたのだそうです
「企業名が開示されれば、取引先から不利な扱いを受けるほか、人材確保でも影響が出る」というのが厚生労働省側の主張です
社員の命か、企業の信用か 裁判所はどちらを向く…過労死公開訴訟
企業を守るのが最優先で、そのためなら従業員が酷使されて自殺に追い込まれても構わない、と厚生労働省は考えているのでしょうか?
特に大阪高等裁判所が、「会社に過失や違法行為がない事案でも、一般には否定的に受け止められ、ブラック企業との評価を受けて信用が低下することもある」として1審判決を取り消したことには違和感をおぼえます
さらに大阪高等裁判所は「規模の小さい会社では、同僚や取引先などに過労死した個人が特定されうる。開示されることになれば、企業側が労災の調査に協力しなくなり、(調査を行う)労働基準監督署の業務に支障が出るおそれがある」との見解を示しているのですから、愕然とします
労働基準監督署の業務に企業の協力が必要であるのは理解できますが、だからといってそのために「企業名は絶対に公開しません」と企業に約束する必要があるのでしょうか?
むしろ過剰な労働を強いるブラック企業の名前を公開し、こうした会社が経営方針を改めるよう促すことこそ、公共の利益にかなうはずです。もちろん、経営を改善しようとしない企業は淘汰されてしかるべきでしょう
厚生労働省の考えや裁判所の判断が変わらないのであれば、いつまでたっても過労死問題は解決しません
さらに年間3万人を超える自殺者が出ている問題も、国は対策を講じると言っておきながら過労死問題は放置する気なのでしょうか?
労働災害認定を巡って裁判になったケースだけがメディアで報道され、企業名が明かされるというのもバランスを欠いています
これでは、「従業員が死なない程度にこコキ使うのはOK」だと国が認定しているようなものです
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