日本に死刑廃止を要求するEU
死刑廃止運動について、当ブログでは個々の事件で死刑判決が下されたり、死刑が執行されるごとに言及しています
死刑廃止を唱える人たちは、「死刑廃止が世界の潮流だ」と主張し、死刑制度をいまだに維持している日本が異常なのだと強調します
ですが、その主張に説得力はありません。死刑制度を廃止した国が多いとしても、「流行に乗り遅れるな」との主張で賛同を得るのは無理でしょう
また、別の人たちは「死刑制度について国民的な議論がされていない」と訴え、国民的な議論(どのような形を想定しているのかは不明です)が行われれば死刑廃止論が勝つと思っているようです
おそらく死刑廃止を叫ぶ側の人たちが選んだ有識者・文化人を集めた議論の場で、死刑制度の残虐性などなどを列挙し、死刑は廃止すべきとの結論を出すのが「国民的な議論」だと思っているのでしょう
しかし、日本人の8割が死刑制度に賛成しているのは死刑の残虐性を理解していないからではなく、凶悪・卑劣な犯罪を許さないとの思いがあるためです
死刑制度の残虐性・非人道性・冤罪の可能性などなどをいくら列挙されたところで、凶悪犯罪を許さないとする国民の感情は揺るがないのです
EU各国が日本に死刑廃止を求めるため、日本で死刑廃止をテーマにしたシンポジウムを開催された、とのブログを紹介します
「死刑廃止にむけて」EU代表部のシンポジウムに行ってきました
シンポジウムの中身について、どのような主張をもって死刑廃止の必要性を訴えたのか、個別に取り上げ論じるだけの時間がありませんでの、これは自分自身の宿題にしておきます
ちなみにEUへの加盟条件の1つが死刑制度の廃止、になっています。日本が死刑制度を廃止すればEUに加盟できるのでしょうか(冗談です)
上記の、自分の私見だけでは話題として不十分なので、欧州評議会の見解を転載しておきます
EUが日本とアメリカに死刑制度廃止を求めた呼びかけです
EUから日本へのメッセージ
EUの死刑廃止政策は、特に日本と米国に向けられています。この2大民主国家は、EUと多くの価値を共有しており、通常は国内外で人権尊重に対するコミットメントを明確に主張しています。
死刑廃止の是非は、世論調査によって決めるべき問題ではありません。凶悪犯罪の発生直後とあってはなおさらのことです。死刑制度の廃止は、国家としての主義の問題です。ひとつの社会を統括する政府には、この問題に関する議論の舵取りを行う責任があります。根強い偏見に賛同したり、死刑執行にまつわる秘密主義を助長したりすべきではありません。それより1日も早く、透明性を高めるための自由な討論を開始することが求められます。
日本政府は、この問題が公開の場で偏見なしに議論されるよう、イニシアティブを取るべきです。
そのような議論を可能にするために、また、日本でも無実の人に有罪判決が下されたことがある点を考慮して、EUは日本に対し、死刑廃止への第一歩として、1993年に解除された事実上のモラトリアムを再導入するよう要請します。
それがかなわなければ、少なくとも、死刑執行の際に一定の最低基準を遵守するよう求めます。死刑確定者のリストから任意に選び出し、その家族にも弁護士にも事前に通知することなく、絞首刑という残酷な方法で刑を執行することは、EUが防ぎたいと考える最低基準違反の一例です。
もし、世界で最も尊重されている人権機構のひとつである欧州評議会がかねてからの警告*を実行に移し、日本のオブザーバー資格を取り消すことになれば、とても残念なことになります。欧州評議会は正しくも「現代文明社会の刑罰制度には、死刑を合法的に位置づける場所はない」との立場をとっています。EUは、日本が今一度行動を起こし、「死刑のない世界地図」に示されている、死刑制度廃止を実現した大多数の国々の仲間入りをすることを強く願っています。
* 欧州評議会の議員会議は2001年6月、日本および米国が2003年1月までに死刑の執行を停止し、死刑廃止に向けた措置を取らない場合には、欧州評議会全体における両国のオブザーバー資格を問題にする旨の決議を採択した。欧州評議会のオブザーバー国で、死刑を存置しているのは日本と米国のみである。
つまり死刑制度の是非を議論しろ、と要求しているのではなく、死刑廃止のための議論を政府が主導し、死刑を容認する国民感情を修正しろと要求しているわけです。「死刑制度の廃止しかあり得ない」というのが彼らの結論だからでしょう
これは「民主的な国家」という名の下に、国民の心の中に手を突っ込んでその思想及び信条、価値観を無理やり変えさせようとする暴力です
死刑という暴力を廃止するためにはこのような洗脳も許されるのだと、EU諸国は考えているのでしょう
日本の死刑廃止運動が呼びかけている「国民的な議論」も、この延長上にあるわけで、「廃止ありき」なのです
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