中国メディアの陳腐な論評「日本アニメ、人気の秘密は民族文化」
毎度ながら珍妙な日本アニメ論を報じてくれるレコードチャイナが、またも「日本アニメの人気の秘密は日本の民族文化にある」という噴飯物の論評を紹介しています。元記事は中国の官制メディアである人民網(チャイナネット)です
日本アニメ、人気の秘密は「民族文化」―中国メディア
日本文化を論じた名著として知られる「菊と刀」を引用し、著者ルース・ベネディクト氏が指摘する、「日本人は頑固でありながら、環境に応じて忍耐することも知っている」、「従順でありながら、他人に操られることを嫌がる」、「忠実でありながら、反逆心もある」、「勇敢でありながら臆病」、「保守的でありながら、新しいライフスタイルを取り入れるのが好き」と日本人の性格を列挙し、日本人がこのような二面性を備えるようになったのは「島国」という地理特性によるもので、この「二面性」は日本のアニメ作品の中でも表現されている、と書いています
何を言いたいのか理解に苦しむ指摘であり、三度も読み返してしまいました
ここは単に「日本は島国」と言いたいだけなのでしょうし、「島国」=卑小な存在だと表現したくて書いたとしか思えません
日本人の二面性が日本のアニメ作品に表現されていると指摘し、真実を突き止めたかのように誇ったところで、何も理解していないのは以下の記事を読めば明らかです。つまり、無駄に長くて整合性に欠けた内容なのです
記事では「武士道精神」だの、「団結精神」だのと項目を挙げ、説明を加えています
が、端的に言うなら少年ジャンプの「友情、努力、勝利」で片付けられるものであり、長々とした説明は不要です
この「友情、努力、勝利」のコンセプトが島国日本とどう結びついているのか、日本人の二面性にどう由来しているのか、まったく説明がありません
そして三番目の項目として、「伝統的な民俗文化」を挙げます。この記事のタイトルでは「民族文化」だったのに、記事の中では「民俗文化」です。漢字の国なのに、この混同はいただけません
結局のところ、民族文化の概念すらあやふやなのでしょう
そんな理解度で、「日本のアニメは日本の伝統的な民族文化がベースにあるから魅力的なのだ」と指摘されても、苦笑するしかありません。そもそも日本のアニメが日本文化の反映であるのは当たり前であって、それを何やら新発見のようにドヤ顔で語られるのは迷惑です
日本の漫画家は伝統文化から、ひらめきのようなものを感じ、想像力をはたらかせて、それを専門的な画法や絶妙な色彩術を通してアニメ作品の中で表現し、同時にリズミカルで魅力あるストーリーを展開するのが非常に得意だ。さらに、日本人は非常に寛容な民族で、この性質が日本人の創造力につながっている。鳥取県中部に位置する北栄町は、中国でも人気のアニメ「名探偵コナン」の作者として知られる漫画家青山剛昌氏の出身地で、それに端を発した「コナンの里」構想での町おこしを行っている。同町の住民票にはコナンの透かしが入っているほどの力の入れようだ。このような日本人の創造力は経済的利益を求めるためではなく、それを心から愛する感情から出たもので、このような創造力は限りない原動力ともなる。
ここでも日本が島国であるとの指摘や、日本人の二面性などとは無縁です
島国の人間の方が大陸の住人より創造性に富んでいる、とでも指摘するならまだ理解できますが、そんな論旨ではありません
なぜか脈絡もなく、「日本人は非常に寛容な民族で」と言い出し、それが創造力に結びついていると言い出します
この記事を書いた人物が日本の文化というものをまったく理解しておらず、日本のアニメ作品に対して見識を有していないのは明らかでしょう
毎度ながら中国メディアの掲載する日本アニメ論は実に陳腐であり、中身がありません
それでもなお、「中国の神話小説など中国特有の民族文化と関係があり、これが中国のアニメ産業の『復活の道』への道しるべではないだろうか」と指摘して結びとしています
中国アニメが神話や民間伝承をモチーフにした駄作の山を築いている現状であるにも関わらず、この発言です
どこを見ているのか、と言いたくなります
日本のアニメが人気を得ているのは神話や民間伝承をモチーフにしているからではく、ストーリーを練り込み、キャラクター造形に手を抜かないからです。そしてドラマを重視しているからでしょう
平凡で退屈な、どこかで見たようなストーリーと、陰影に欠けた凡庸なキャラクターで手抜きのドラマしか作れないからこそ、中国のアニメはつまらないのです
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