日本のアニメは暴力的で卑猥と批判する中国

取り上げる時期を逸した話題で恐縮ですが、今年の5月に中国のメディアに「日本のアニメは今なぜ暴力的で卑猥なのか」と題する記事が掲載されていましたので取り上げます
記事の元ネタは中国のアニメニュース専門サイト「中国動漫産業新聞網」だと紹介されています。しかし、業界紙なのか、私的なウェッブサイトなのかは不明であり、記事の内容もかなりの誤解と偏見で成り立っています

日本のアニメは今なぜ暴力的で卑猥なのか―中国メディア

「週刊少年ジャンプ」を記事では「日本を代表するアニメ雑誌」だと紹介しているところからして、記事を書いた人間の認識・情報量がいかに貧しいかが分かります
事実誤認にいちいちツッコミを入れるの面倒ですが、事実誤認が多いのはそれだけ無知である証拠です。つまり日本のアニメーション事情をよく理解もしていないのに、一段高いところから見下すような論評を行なっているわけで、これは相当に恥ずかしい行いだと言えます
以下、いくつかの指摘を検証・反論してみます

東京都が2010年に改正した「青少年健全育成条例」の中では、過激な暴力シーンや性的表現を禁止する考えが明確に示されているが、メディアやアニメファンからの反対圧力も大きく、こうした作品に対しては、政府も結局、見て見ぬふりをする姿勢を取らざるを得なくなっている。

東京都の条例は東京都が執行するものであり、政府(日本政府)は無関係です
東京都の条例を巡っては「性的表現とは何か?」が定かではなく、何を規制し何を規制しないかが明確にされていないのですから、条例を執行してマンガやアニメを取り締まるのは難しいのです。法律もなしに政府の意向で何でもかんでも取り締まる中国と一緒にされては困ります

アニメ作品の過剰供給がメディア間の悪質な競争をもたらしている。アニメブームに乗っかり、大儲けをしたいと考える人がほとんどで、こつこつと強固なブランドを構築していこうと考える人はいなくなっている。20世紀末、日本のアニメの大部分は読者に受け入れられる作品か数年かけてまず試し、その後初めて商品化するというスタイルをとっていた。それが今では、有名な作家が新作を出すと、すぐに市場に出される。一方、まだ売れていない作家の作品となると、たとえおもしろくても、短期間しかメディアに取り上げてもらえない。そのため、自分の「名前」では作品が売れない作家たちは、「邪道」を選択するしか道が残されていないのだ。

アニメとマンガの区別ができないまま記事を書いています。そして、日本のアニメやマンガの実情を知らないのに、見てきたように嘘を並べるのは止めるべきでしょう

アニメ作品の過剰供給により、読者が目新しいものを求めるようになっていることがある。新作といわれるアニメの大部分はストーリーや画風、テーマ曲などの点で現存するアニメとかぶっている。そのため読者は目新しいものを求めるようになる。
それに加えアニメファンの年齢層や受けた教育の程度なども異なるため、より多くの読者を獲得するためには、人が本能的に求めている、性的なものや暴力的なものに訴えるしかないのだ。

どこの国のアニメについて語っているつもりなのか、と尋ねてみたいところです
最初から結論ありきの内容であり、何ら目新しい指摘ではありません
この記事の趣旨からすれば、「君に届け」や「坂道のアポロン」も卑猥で性的なアニメなのでしょう

日本のメディアは以前、アニメ作品を「子供たちに人気となるアニメ」と「人の目を引く作品」の2つに絞って売り出していた。しかし、後者のほうがより多くの読者を獲得できることや読者がいなければ広告収入を獲得し続けられないことに次第に気づくようになった。そのため、「健全」なアニメは脇に追いやられるようになり、暴力的なものや性的描写を売りにしたアニメが台頭するようになったのだ。

日本のアニメを「子供たちに人気となるアニメ」、「人の目を引く作品」の2種類だけと決めつける考え方に呆れます。そんな視点でしか見れないからこそ、くだらない結論にしかたどり着けないと言えます
知ったかぶりをかまして見当はずれな指摘をし、何かを言い当てたつもりになっている恥ずかしい記事です。記事が消える前に全文をコピーし、ネタとして永久保存しておこうと思います

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