中国では作れない春秋戦国時代アニメ「キングダム」

時折、力の入ったマンガやアニメの論評を掲載するマイナビニュースが、マンガやアニメで展開中の「キングダム」を取り上げ、紹介しています
春秋戦国時代の末期、中国統一に乗り出した秦の始皇帝と1人の武将を主人公にした物語です

春秋・戦国時代を舞台にした漫画『キングダム』はなぜこんなにも面白いのか

原泰久による原作のマンガはコミック本で27巻まで出ており、ストックは十分です
NHKはこれを38話のアニメーション化すると発表し(制作はすたじおぴえろが担当)、6月から放送が始まっています
例によって中国の史実を元にした歴史大河ドラマはやたら登場人物が多く、次々と新たな人物が現れ、その出自や経歴が分かっていないと登場シーンだけ見てもどんな役割を担っている分からない、という問題があります。三国志もしかりで、そのため視聴者は原作コミックを読んだり、春秋戦国時代を解説した本を読んだりして情報を仕入れ、知識を蓄える必要に迫られます
そんな煩雑な下準備も、コーエー版のゲーム「三国志」を攻略本片手にプレーした人たちにとって苦ではありません
日本ではすでに水滸伝や三国志、「項羽と劉邦」といった歴史小説、マンガが存在し幅広いファンがいますので、「キングダム」が受け入れられる素地は十分だと言えます
さらに上記の記事で取り上げているように、英雄豪傑の武勲や華々しい戦闘を中心としたドラマではなく、キャラクターに主眼すえた物語として表現されているところが魅力なのでしょう
「大将軍になる」との野望を抱えた信と、後に秦の始皇帝として君臨する少年の成長と挫折、葛藤を描くところに力をいれているのです
これが中国や韓国の手がけるアニメーションであれば、英雄・豪傑は最初から英雄であり、豪傑であり、葛藤も迷いもなく、人間としての成長を描こうという視点はありません
難敵に敢然と立ち向かい、鮮やかに勝利する場面を描けばそれだけで視聴者は拍手喝采するのであり、主人公の内面を描く必要などないというのが、中国や韓国のアニメーション作りです
それとはまったく逆に位置するのが日本のアニメーションです。「ガンダム」のパイロットであるアムロ・レイはニュータイプですが超人ではなく、多感で悩みを抱えた少年として描かれています
中国や韓国が秦の始皇帝をアニメ化するなら、始皇帝の超人的な活躍・武勲をこれでもかと描き、それで満足するはずです。こどもの頃から図抜けた武勇と知力を誇示させ、周囲を圧倒し、従わせ、支配する人物という展開です
日本のアニメーションを真似し、パクっている中国や韓国ですが、ドラマの作り方や陰影のあるキャラクター造形といった技法は使いこなせないままです
日本が中国の歴史を題材に、「キングダム」や「十二国記」のようなアニメを作っているのに、中国や韓国にそれができないわけで、その差は埋まりそうにありません

キングダム 公式PV


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