「日本人は島国生活のせいで保守的だ」という説への疑問
巷にはさまざまな「日本人論」が登場します。当ブログでもさまざまな「日本人論」を取り上げていますが、自分はこれらの「日本人論」に賛成する気にはなれず、いつも批判する立場です
女性セブン2012年10月18日号で脳科学者によるい遺伝と脳科学の視点から、「日本人は島国生活が続いたため保守的で、移動を嫌う」とする説を掲載しています
日本人 「島国生活」が数万年続いたため保守的で移動を嫌う
数万年を経て培われた日本人の資質は、「島国生活のため保守的になった」のでしょうか?
明治時代には海外へ渡航し、世界を見てやろうという若者が大勢いました
最先端の知識を得るためには留学する必要があったからです
数万年を経て培われた資質であるなら、明治時代の若者と現代の若野で遺伝子の内容に大きな違いはないはずです
日本の若者が海外留学に消極的になったのはここ10年ほどの傾向であり、これを「島国生活が長かった日本人の遺伝的な特質」だと断定するのは無理があります
変化があったのは遺伝子ではなく、脳でもなく、日本の社会の方でしょう
日本国内の大学でもそこそこレベルの高い授業を受けられる(中国や韓国の大学よりレベルは高い)のですから、高い費用を負担してまで、リスクをおかしてまで海外に留学する必要はないと考える人が増えても不思議ではありません
「日本人は保守的だ」と、何をもって指摘したいのか、この記事では明確にされていませんし、何が遺伝の影響なのかの不明です
海外旅行に出かける日本人は増えており、「移動を嫌う」のが民族の特性だと断言するのは無理があります
「日本の社会も日本人の遺伝子が作り上げたものだ」とする考え方もあるのでしょうが
鎖国されていた江戸時代、日本の主要な輸入品は書籍です。それだけ海外から知識・情報を貪欲に吸収しようと欲していたのであり、好奇心が旺盛だったといえます
オランダ語やドイツ語の書籍を輸入し、翻訳していますし、西欧の言語から中国語に翻訳された書籍も数多く輸入されています。中国語の書籍の場合は漢文で表記されていますから、江戸時代の人もそのまま読めたわけです
さて、拙い反論を並べてみたのですが、上記の女性セブンの記事は単に、日本人→島国→保守的、と言いたいだけではないかと感じます
実に雑な「日本人論」で、居酒屋談義レベルでしょう
脳科学の結果とするなら、日本人の脳のどこが他の民族と違っているのか、それを明らかにすべきではないでしょうか?
「絆」を重視する遺伝情報が日本人の染色体のどの部分に書き込まれているのか、特定してもらいたいものです
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