鉄道インフラ輸出　メイド・イン・ジャパンの逆襲: 夾竹桃日記

2012年08月20日

鉄道インフラ輸出　メイド・イン・ジャパンの逆襲

産経新聞が、「鉄道インフラの輸出で日本の快進撃が続いている」との記事を掲載しています

産業の空洞化、円高による輸出不振などと報道される日本の経済ですが、そうそう暗い話題ばかりではないようです

日立製作所(6501.T)は２５日、英運輸省から高速鉄道の車両更新プロジェクトを正式に受注したと発表した。総事業費は４５億ポンド（約５４４５億円）で、英国鉄道史上最大規模となる。受注を受けて欧州での市場開拓も視野に、日立は英国で鉄道車両を生産する新工場も設立する。

同プロジェクトは、英運輸省が主導するＰＰＰ（官民連携事業）のスキームで実施。国際協力銀行などからの融資や独立行政法人の日本貿易保険による金融支援も受けており、日本政府も受注に向けて全面支援していた。英国で大型案件を受注したことで、日本の成長戦略の柱としているインフラ輸出にも弾みがつく可能性がある。

日立の中西宏明社長は「大変うれしく思う。イノベーション事業を通じてグローバルな成長を目指す上で、非常に大きな一歩」とコメント。枝野幸男経済産業相も「今後もパッケージ型インフラの海外展開に一層積極的に取り組んでいく」としている。

日立子会社などが出資する特別目的会社「アジリティ・トレインズ」が　英国の主要幹線で、ロンドンから北部に約７００キロ伸びるイースト・コースト・メイン・ラインと西部へ約３００キロ向かうグレート・ウエスタン・メイン・ラインを走行する車両のリース事業を展開。日立が同リース事業向けに５９６両の製造と２０１７年から２７年半にわたる保守事業を一括受注する。車両は最高時速２００キロで、編成は５両（定員約３００人）と９両（同６００人）の２種類。

もう随分と前の話ですが、ニューヨークの地下鉄車両調達で日本企業の落札が決まった際、アメリカの議会からイチャモンがついた事件がありました

「ニューヨーク市の象徴でもある地下鉄の車両を、なぜ日本企業から購入しなければならないのか？」と議員が異議を唱えたのです

しかし、そんな異議も「アメリカ国内にはすでに地下鉄の車両を製造している企業がない」という現実の前に霧散してしまいました

上記の記事からも分かるように、鉄道向け車両を製造しているのは大手３社である独シーメンスと仏アルストム、カナダのボンバルディアと日本企業、それに中国企業くらいです。韓国には現代ロテムという企業があって韓国の高速鉄道向け車両を製造していますが、欠陥だらけで数多くのトラブルが露呈しています

自動車の時代と言われながらも各国が鉄道インフラの整備を計画しているのは、安全な長距離・大量輸送のシステムが国の発展に不可欠だと見ているからです

鉄道の事故リスクは自動車よりはるかに低いのですからさて日本勢の快進撃とはいっても、前途洋々とはいきません

例えばブラジルの高速鉄道計画では、日本企業が入札を見送ったりしています

ブラジルはリオデジャネイロのオリンピック開催に向け、サンパウロなど主要都市を結ぶ高速鉄道の導入を計画していました。しかし、ブラジル政府は「鉄道技術の完全移転。運賃の決定権は政府にある。建設を請け負った外国企業は４０年間、責任をもって鉄道経営にあたる義務を負う」など、無茶な条件を出していました

フランスのアルストムも応札を断念し、入札したのは韓国企業だけという有様でしたがブラジル政府は韓国企業の落札を認めず、話は宙に浮いたままです

いまから再入札を行なっても、オリンピックまでに建設するのは不可能です

ブラジル政府の高飛車な要求が計画そのものをダメにしてしまったと言えます

他の国の高速鉄道計画や地下鉄整備計画にも難しい条件や、過剰な要求が組み込まれており、おいしい話はそうそうないと見て間違いないのでしょう