第147回直木賞は辻村深月「鍵のない夢を見る」
第147回芥川賞、直木賞の選考が行われ、芥川賞は鹿島田真希の「冥土めぐり」が選ばれ、直木賞は辻村深月の「鍵のない夢を見る」が選ばれました
第147回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が17日、東京・築地の新喜楽で開かれ、芥川賞は鹿島田真希氏(35)の「冥土めぐり」(「文芸」春号)、直木賞は辻村深月氏(32)の「鍵のない夢を見る」(文芸春秋刊)に決まった。8月中旬に都内で贈呈式を開く。受賞者には正賞の時計と副賞100万円が贈られる。
芥川賞の鹿島田氏は東京都生まれ。白百合女子大卒。2005年に「六〇〇〇度の愛」で三島由紀夫賞を受けた。
受賞作は脳の病気にかかった夫と暮らす妻の物語。母と弟からの抑圧に苦しむ主人公が、夫との小旅行を経て新しい生き方に踏み出す。選考委員の奥泉光氏は「(主人公の旅行先は)今はうらぶれたかつての高級ホテル。その変貌は日本経済の縮図といえる。個人史でありながら、日本社会そのものを映す広がりがある」と作品をたたえた。
鹿島田氏は「病気や貧困など実人生では理不尽と感じることが起きるが、それを超越した世界もあるということを書きたかった」と話した。
直木賞の辻村氏は山梨県生まれ。千葉大を卒業後、04年に作家デビューした。「ツナグ」(吉川英治文学新人賞)、「水底フェスタ」などの著書があり、「本日は大安なり」はドラマ化もされた。
受賞作は犯罪をテーマにした連作短編集。地方を舞台に、小さな事件に関わる普通の人々の内面を鋭い筆致で描いた。選考委員の桐野夏生氏は「報われない苦しみを感じている女性の今が書かれている。つい悪いことをしてしまう人間をうまく描くなど現実に肉薄している」と評した。
辻村氏は「(受賞によって)今後も書き続けるようにと背中を押してもらった」と喜んだ。
(日本経済新聞の記事から引用)
今回、直木賞の候補作は朝井リョウ「もういちど生まれる」(幻冬舎)、辻村深月「鍵のない夢を見る」(文芸春秋)、貫井徳郎「新月譚」(文芸春秋)、原田マハ「楽園のカンヴァス」(新潮社)、宮内悠介「盤上の夜」(東京創元社)でした
すべて読んだことのない作品なので、名前だけから判断すれば貫井徳郎が最有力かなと思っていました
が、選考の第一段階で早くも辻村深月と原田マハに絞りこまれ、他の3人は脱落と決まりほど選考委員の評価ははっきり分かれたようです
平成生まれで22歳ながら直木賞候補になった朝井リョウは、「桐島、部活やめるってよ」で第22回 小説すばる新人賞を受賞しデビューした注目の新人です。同作品は今年映画化されており、話題性も十分でした。しかし、候補作「もういちど生まれる」は選考委員にあまりウケなかったようです。まだ若いのですから、今後の作品に期待というところでしょうか
最終的には原田マハの長編小説「楽園のカンヴァス」より、辻村深月の連作短編小説「鍵のない夢を見る」が支持を集める結果となりました。連作短編集での受賞というのは意外な気がします
辻村深月は元々ミステリー畑の作家で、長編「冷たい校舎の時は止まる」がメフィスト賞を受賞してデビューし、これまでに「オーダーメイド殺人クラブ」など2度ほど直木賞候補に挙げられていました
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