森本拓大教授を防衛相に起用
政権交代によって民主党政権が誕生して以来、外交や安全保障分野での迷走振りは目を覆いたくなるほどで、ともかくぶれまくり、後退を重ねてきたと言えます
鳩山首相は何の実益もない「東アジア共同体」という空疎な理念を振り回し、沖縄の米軍基地移転問題で空手形を乱発して日米双方に深い傷を負わせました。菅直人首相は中国追従の姿勢が露骨であり、尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に体当たりした事件では逮捕した船長の保釈を決めるという愚行を犯しました
民主党内には外交や安全保障を語れる国会議員がほとんどいないという、恐ろしいくらいの素人集団だったわけですから、政府の迷走も当然です
野田首相は今回の内閣改造で拓殖大学大学院の森本敏教授を防衛相に起用しています。この人事には期待しますが機能するかどうかは疑問です
上にも書いたように、民主党は素人集団のため党内で外交・安全保障について議論ができないのですから、森本防衛相を支えることもできないのです
初の民間人、それも元航空自衛官だ。「シビリアンコントロールに反する」「選挙の洗礼を受けていない」などと早速、厳しい攻撃にさらされたが、押しも押されもせぬ専門家に、いつの間にか誰もが黙って耳を傾けるようになっていた。
「私は自信がない」
在日米海兵隊に配備予定の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの説明のため、関係する地元自治体に向かう前日、記者会見で打ち明けた言葉は、現在の防衛大臣が背負うものの大きさを物語っていた。
「防衛大臣の大きな仕事の1つは日米同盟関係を安定的に機能させること。これはかつて、私が外務省に勤務していたころに取り組んだことでした」
当時、外務省が真正面で担ったことを、今は防衛省が負う。くしくも、森本大臣は防衛大臣としても同じような体験をすることになった。損な役回りばかりに当たっているように見えるが、自身は冷静に分析する。
「それだけ自衛隊と米軍との関係が深化し、防衛省への信用も増しているということでしょう」
そもそも、オスプレイは自衛隊の飛行機でもなければ、事故も自衛隊が起こしたわけではない。それなのに、安全性について国や外務省の前面に立ち、防衛省が説明を任されるのは試練だといえる。
しかし、在日米軍が能力を発揮することは日本の安全保障に不可欠である。自衛隊のトップにとっての責任は、自らの組織だけではなくなっていたのだ。
「議員会館に行くことが多いです」
と周囲が言うように、就任以来、与野党を問わず国会議員への説明に時間を割いている。
「議員同士であれば、電話1本ですむことも、私の場合はそうはいきませんから」
安全保障のエキスパートとして培ってきた人脈はあれども、大臣として居住まいを正し、1人ひとり、アポを取って永田町に赴いている。数時間を要することもあるという。こうしたコミュニケーションに投じるエネルギーは多大だ。
「それでも行く」
分かってもらえないかもしれないが、諦めずに足を運ぶのが信条だ。「自信がない」としながらも、地元の説得を怠らず、先日はオスプレイにも試乗したことからもその思いはうかがえる。
(産経新聞の記事から引用)
今回の人事について鳩山元首相は、「ミサイル発射のスイッチを入れる権限を有する人が選挙の洗礼を経ないでいいのか。国民の批判を受けるのではないかと心配している」と疑問を提起しているのですが、いかにも鳩山由紀夫らしいトンチンカンな発言です
「ミサイル発射のスイッチ」とは何を指し示しているのでしょうか?
日本は他国を攻撃するような弾道ミサイルは保有しておらず、鳩山由紀夫がどのようなミサイルを想定して発言しているのか不明です
唯一可能性があるのは、北朝鮮の弾道ミサイルを撃ち落とすためのスタンダードミサイルやパトリオット・ミサイルですが、これはあくまでも防衛のための兵器であって、他国を攻撃するための兵器ではありません
しかも北朝鮮の弾道ミサイルに関しては防衛省・自衛隊が組織としてこれに当たるわけで、防衛相が直接ミサイルのスイッチを押すわけではないのです(まあ、指揮権発動を鳩山由紀夫は「ミサイルのスイッチを押す」と表現したつもりなのでしょう)
安全保障という見地からすれば、防衛相は国会議員でも民間人でも構わないのであり、「国会議員ではない」からといって不適任と決めつける根拠は不明です
法律では首相が国会議員の中から選ばれると規定があるだけで、民間人を防衛相に起用してはならないとの規定はありません
「自分は(防衛の)素人」などと豪語する国会議員よりましでしょう
繰り返しになりますが、問題は民主党の外交・安全保障の路線がまったく不明確であるという根本的な欠陥にあり、森本防衛相の構想がすなわち民主党の構想となり得るのかどうか、です
森本大臣が何らかの政策判断を下したとして、民主党内の左派グループは猛反発し、足を引っ張りにかかる事態が予想されます
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