女子高生が同級生をナイフで刺す 高野山高校

和歌山県にある高野山を旅行で訪れたのは、もう20年以上も前です。司馬遼太郎の小説「空海の風景」を読み、興味が湧いたためでした
その高野山にある高校で、女子生徒が同級生をナイフで刺し、重症を負わせる事件がありました


18日午後1時55分ごろ、和歌山県高野町の高野山大の体育館で、私立高野山高校3年の女子生徒(17)=高野町=が同級生の少女(17)=同=の背中を折り畳みナイフで刺した。被害者は重傷。県警橋本署は女子生徒を殺人未遂容疑で逮捕した。
橋本署によると、女子生徒は「(被害者に)バレーボールの後片付けをするように言われ、かっとなって刺した」と供述。「ナイフは日ごろから護身用として持っていた」とも話しており、同署は銃刀法違反容疑でも調べる。
事件当時は1、3年生が合同でバレーボールの授業をしていた。後片付けをしている際、制服姿で見学していた女子生徒がスカートのポケットに入れていた刃渡り約8.5センチのナイフを取り出し、1回刺した。
周囲には教師を含め約10人がいたが、刺した瞬間は誰も見ていなかった。傷は約5センチの深さで肺に達していた。被害者は和歌山市内の病院にヘリコプターで運ばれた。
高野山高校の岡本弥久校長(66)は「いじめは全くなかったと思う。2人ともおとなしくて真面目な生徒で、正直驚いている」と話した。
同校は高野山の山上にあり、約800メートル離れた系列の大学施設を普段から使っていた。周辺には金剛峯寺をはじめ100以上の寺院が密集している。
(共同通信の記事から引用)


別の報道によれば、逮捕された女子生徒は「護身用」として日頃からナイフを持ち歩いていたそうです
女子生徒が護身のためナイフを持ち歩かなければならない日常が、高野山高校にはあったのでしょうか?
寮生活を送っていた普通科特進クラスの生徒が加害者であり、被害者であったとすれば、日頃から対人関係で不平・不満が蓄積していたと考えられます
加害者である女子生徒は、さまざまな要因があってストレスがつのり、殺意を抱くまでになったと推測されるのですが、学校側は生徒の変化にまったく気がつかなかったようです
スポーツに打ち込むため、勉学に専念するため、集団での寮生活をするのは望ましいと考える風潮が世間一般にはあります
確かに集団生活を経験することで連帯感や信頼関係が醸成されたり、友情を深めたり、我慢をすることで忍耐力を養ったり、他者への配慮・気配りができるようになるなど、メリットはいくつも列挙できます
しかし、それは寮生活を適切に管理し、個々の生徒の心情を把握した上で得られる結果でしょう
もちろん、体育会系のような集団の場合、上級生が下級生の面倒を見るとの建前にかこつけ、教師が放任してしまっているケースもあるわけで、そんな寮生活ではいじめなど横行するのがしばしばです
学校でも寮でも同じ人間と顔を突き合わせる生活というのはストレスがたまるものであり、息抜きの場がありません
寮生活を充実したものにするには、学校側の努力が欠かせない(舎監として教師が泊まり込み、生徒の生活に気配り、目配りをするのは当然です)のですが、高野山高校の場合はどうだったのでしょうか?
加害者や被害者となった女子生徒の変化を見過ごしていたり、両者間のトラブルに気がつかなかったとすれば、生徒の管理監督が至らなかったと言わざるを得ません
「2人とも大人しくて真面目な生徒だった」とのコメントを見ると、本当に1人1人の生徒を把握していたのか、疑問に思います(いわゆる社交儀礼として、そう表現している可能性もあるわけですが)
思春期のこどもたちは心情の変化が激しく、午前中は明るく快活に見えても午後はふさぎこんでいたりするものです
日頃から護身用としてナイフを持ち歩いている女子生徒がいたなら、彼女の平素の振る舞いにはかなり奇矯な部分があったはず、と自分は考えるのですが

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