大阪心斎橋殺人を考える1 身勝手な動機

5月末に新潟刑務所を出所したばかりの礒飛京三容疑者が、大阪の繁華街で無関係の男女に包丁で切りつけ殺害するという凄惨な事件がありました
「自殺をしようとしたが死にきれなかった。人を殺せば死刑になると思ってやった」と語る礒飛京三容疑者の態度には唖然とし、怒りがこみ上げてきます


15歳でシンナー、間もなく大麻にはまり、19歳で覚醒剤に手を染めた。身も心も薬物に売り渡した末、無差別に2人の命を奪った通り魔に対し、裁判員らが突き付けたのは「死刑」という究極の贖罪(しょくざい)方法だった。大阪・心斎橋の路上で平成24年6月、男女2人を刺殺したとして、殺人罪などに問われた無職、礒飛京三被告(40)。大阪地裁は6月、求刑通り死刑を言い渡したが、公判で明らかになったのは、被告と覚醒剤の長年にわたる執拗(しつよう)で深いかかわりだ。覚醒剤中毒の後遺症なのか、法廷でも小刻みに震え続ける右手が、己の体を支配し破壊する覚醒剤の恐ろしさを見せつけた。
「大阪で仕事が見つかりました。明日、新幹線で向かいます」
電話から聞こえる礒飛被告の声は弾んでいた。2人の命を奪う、わずか40時間前の出来事だった。
5月の初公判。弁護側は冒頭陳述で、新しい仕事への希望が失望へと一転したゆえに、被告が自暴自棄に陥り犯行に至ったと訴えた。ただ、犯行を説明する上でさらに重要な要素となるのが、被告と薬物との切っても切れない「縁」だ。
検察、弁護側双方の冒頭陳述などによると、被告は昭和50年、栃木県で材木商を営む父と母の間に、3人兄弟の末っ子として生まれた。5歳で母と死別。小学5年のときに父親が経営に失敗して運転代行業に転職し、狭いアパートに引っ越した。父親の勤務は深夜。夕食は弁当や焼きそばを買って1人で食べることが多かった。
「寂しかった…」。孤独感を抱えた少年はやがて不良となり、中学3年だった15歳のときに初めてシンナーを吸った。毎日のように吸引し、暴走族総長を務めていた16~17歳で大麻に手を出した。そして暴力団に属していた19歳のとき、覚醒剤を手に入れた。
(産経新聞の記事から引用)


栃木県出身の礒飛容疑者は、事件を起こして刑務所に服役するほど素行が悪かったためか、家族や親類からも縁を切られた状態なのでしょう
知人を訪ねて大阪へ来た、と語っています
どのような事件を起こして新潟刑務所に服役するに至ったのか、まだ確たる情報はありません
今のところは、礒飛容疑者が地元では「石橋 寿辺苦絶悪」 (イシバシ・スペクター)を名乗る暴走族のメンバーだったと情報が出回っています
さて、無差別殺人は「拡大自殺」であると指摘する考えがあります
たびたび引用させていただいている片田珠美著「無差別殺人の精神分析」(新潮選書)では、過去の無差別殺人のケースを考証しています
今回の事件も「死に切れない」から「人を殺せば死刑になる」という、過去の無差別殺人の動機と重なる部分がありそうです
もちろん礒飛容疑者には彼j個人の生活史があり、自分をここまで追い詰めるに至った事情が存在するわけですから、「過去の無差別殺人犯と同じパターン」だと決めつけたところで何も明らかにしたことにはなりません
この事件の意味を読み解くには礒飛容疑者の生活史を掘り返し、ここまで自分勝手な動機で無関係の人を殺せるようになった経緯を吟味し、考察する必要があります
礒飛容疑者の過去について、メディアはあれこれ取材していると思われます。新たな報道がなされるのを待って、再び取り上げるつもりです

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