血飛沫舞い散る中国の学生アニメ「SUB WARS」

中国では大学の7割に漫画、アニメーション関連の学科が設けられ、アニメーションを専攻する学生が大勢いるのは既に報じられたところです
そうした豊富な人材を武器にアニメーションの一大生産基地を目指しているわけですが、必ずしも成功しているとは言えず、ヒット作の話題は日本に伝わって来ません
中国に雨後の竹の子のように出現したアニメーション制作会社のほとんどが、利益を生み出すのに四苦八苦しているとの話は伝わってきます
となれば学生たちも自らの技量をアピールし、少しでも有利な就職先を得ようとするのでしょう
YouTubeに中国の学生によるショートアニメが多数アップされているのには、こうした背景があるのだろうと推測します
これまでにもいくつか学生のショートアニメを紹介してきました。動画の技術的な水準は高いと感じるものの、ストーリーは陳腐で何を主張したいのかさっぱりわからず、魅力に欠けるものばかりというのが自分の印象です
今回紹介する「Subway Wars!」と題するショートアニメもそんな作品です
血飛沫が飛び散る殺戮シーンもありますので、視聴は自己責任でお願いします

Subway Wars!


作り手である学生たちの、「どうだ、すげーだろう。おれたちゃこんなもの、サクサク作ってしまうんだぜ」との自慢が鼻について、とても評価する気になれません
老人を敬う姿勢の欠如した中国社会への皮肉とかそんなものはどうでもよくて、ただひたすら暴力の発現を描きたかっただけなのでしょう
地下鉄の乗客の中に、「NARUTO」に登場する「アカツキ」のメンバー御用達のマントを着た人物が登場するのも、学生たちの嗜好を示しています
つまり「NARUTO」のような激しいバトルシーンを自分たちも描けるのだとアピールしたくて、このショートアニメを作ったと推測されます
だからといって、この作品を見て「中国のアニメを専攻している学生はすごいねえ」と感心するのは、情報に疎いジャーナリストくらいでしょう
中国のアニメーションは幼児向けが中心であり、良い子のための娯楽ですから激しいバトルシーンを描く技術は必要とされません。学生たちが描きたいアニメ(それは「NARUTO」や「攻殻機動隊」のような大人の鑑賞にもたえる作品なのでしょう)と、中国の市場が求めるアニメとは別物であり、その解離に学生たちは直面し、苛立っているようにも感じられます
せっかくの才能も、幼児向けのほのぼのアニメでは生かせないのですから
あとは専門技術集団として、ハリウッドや日本のアニメの下請けで食いつなぐしか選択肢はないように見えます
学生有志が集まって独立系のアニメ制作会社をやるという選択肢もありますが、成功する可能性は限りなく低く、誰もそんな博打はやらないでしょう
この暴力的なアニメには、学生たちの現実への不満、苛立ちが反映しているように感じられます

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