「国家イメージまで創り上げた日本のアニメ」と報じる中国メディア

いつもトンチンカンな記事を書く中国メディアですが、今度は人民網日本語版が「国家メージまで創り上げた日本のアニメ」と題した記事を配信しています

国家イメージまで創り上げた日本のアニメ
(前略)
例えば、2005年7月、当時の総理大臣・小泉純一郎氏の外交コンサルティング機構は外交発展の基本理念として、日本語や日本の流行文化、現代アートの情報発信源普及を切り口に世界の『日本アニメ愛好世代』を育てることを提起。
06年には当時の外相・麻生太郎氏が「文化外交の新思考」という講演の中で、「日本のアニメやクリエイティブ産業を足掛かりに、日本文化をPRし国際交流を強化したい」と明言した。
その成果もあり、近年、日本が海外で開催する各種クリエイティブ産業の作品展示イベントはますます増加しており、その影響力も拡大している。このような政府主導の文化外交は作品の国際化を促進するだけでなく、日本の国家イメージをアピールするのにも貢献している。


これを読めば、中国メディアがいかに表面しか見ていないかが分かります
海外のテレビ局で日本のアニメーションが放送されるようになってからもう随分と時間が経過しており、昨日今日始まったブームではありません
当時は日本政府の支援などなく、アニメーション制作会社が海外のテレビ局に売り込んで販路を開拓した結果です
それをまるで「政府の戦略」であるかのように、記事では取り上げています
前にも述べましたが、韓国政府は韓流ブーム振興のため2700億円もの補助金を支出しています
一方で、日本政府のCool Japan政策の予算は11億円少々に過ぎません
個別のアニメーション作品を見ても分かるように、日本の国家イメージをアピールする目的で「新世紀エヴァンゲリオン」が作られたわけではなく、中国メディアの認識はとんでもなくズレていると言うしかないのです
漫画・アニメーションで展開されている「君に届け」にしても、日本人の礼節や価値観を世界に向けたアピールする目的で作られているのではなく、作品世界が日本を舞台にしている以上、日本人の通念にある価値観や人生観を登場人物たちに反映させるのは必然です
そうでなければ、世界で一番口うるさい日本のアニメーションファンは黙っていません
漫画でもアニメーションでも、日本の視聴者が見て不自然ではない日本人の言動を描く必要があるわけで、いまさら説明するのもどうかと思ってしまいます
まあ、説明しなければ頭がコチコチの中国メディアの記者には理解できないでしょう
そしてこの記事が書かれた事情を斟酌すると、「中国も日本のようにアニメーションなどソフト産業を介して、中国の国家イメージを世界に発信すべきだ」と主張したいのだと推測されます
しかし、ありもしない「理想的国家としての社会主義中国」をアニメーションでアピールするなど至難の技でしょう
ありのままの日常を描写することすら、中国では許されません。政府の官僚が賄賂を貪り、ニセモノの商品が巷に溢れ、人を騙してでも金儲けをした者が勝ちという中国の日常を「サザエさん」風に描いたなら、制作者はたちまち逮捕され反革命罪で死刑になりそうですらこそ、ストーリー構成に工夫が必要です

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