映画監督テオ・アンゲロプロス 交通事故で亡くなる
ギリシアの映画監督テオ・アンゲロプロスが撮影中、バイクはねられ死亡したと報道されています
76歳になったいまでも新作の撮影に挑むほど創作意欲旺盛だったようで、実に残念です
映画界の世界的巨匠、アンゲロプロス監督死去 撮影中にバイクにはねられ
当ブログでは以前に、アンゲロプロス監督の代表作の1つであり「ユリシーズの瞳」を取り上げました
「ユリシーズの瞳」は1995年のカンヌ映画祭でグランプリを受賞した作品であり、アンゲロプロス監督の作風を如実に反映したものです
1人の映画監督が幻の映画作品のフィルムを求め、戦乱の渦中にあるユーゴスラビアへ旅をする物語なのですが、それは同時に彼が自分の過去を旅する過程としても描かれるという多重的な構造をもっています
解体され撤去されたレーニンの巨大な像が川船で運ばれるシーンです。共産主義時代の終わりを描く象徴的な手法を見せてくれます
この「ユリシーズの瞳」もその他の作品も、アンゲロプロス監督の映画は決して万人向けの楽しい作品ではありませんが、ギリシアの戦前・戦後の歴史とそれに翻弄される人々の姿を詩情豊かに描いた作品群は、映画芸術の到達点の1つ言えます
日本では岩波ホールで上映された初期の代表作「旅芸人の記録」が評判となり、アンゲロプロス監督の名前が知られるようになりました
「旅芸人の記録」は上映時間4時間という型破りな作品なのですが、岩波ホールへこれを見ようとする人が列をなしたため、異例のロングラン公開となりました
シネコン全盛の現代では考えられない話ですが
「監督の死をきっかけに」というのは残念ですが、アンゲロプロスの残した映画が再び注目され、その魅力を理解する人が増えたらいいな、と思い取り上げました
上映時間の長い映画を観るのは時間の無駄だと考える人もいるのでしょうが、たとえば人間はその生涯の中で交通渋滞に巻き込まれ、数十時間は無駄にしているわけです
4時間の映画を見て少しでも人生が豊かになるのであれば、随分と得な時間の使い方ではないかと考えます
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