次世代「アニメ」大国インドが台頭する、との記事 日経BP

2006年5月9日付けの日経BPに掲載された記事で、次世代「アニメ」大国として中国とインドが台頭してくるだろう、と書いたものがあります
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次世代「アニメ」大国 中国とインドの実力

中国のアニメーション振興策については過去にも当ブログで取り上げてきましたので、割愛します
インドの方ですが、あまりアニメーション制作の話は目にしません
実際にインドのアニメーション作品を見た経験を有する方は少ないと思います
しかし、上記の日経BPの記事ではインドがアニメ大国になると予想しています
その根拠は4点です
1 英語が通用する
2 IT大国でコンピューターグラフィックスの扱いに長けている
3 製作コストが安い
4 元々インドは世界一の映画大国である
まあ、取ってつけたような理由が並んでいます。この記事を書いたライターが本当にインドのアニメーション産業を取材した上で、上記の理由を列挙したのかは疑問です
単にコンピューターの操作が得意だからといって、優秀なアニメーターになれるはずありません。インドはIT大国だからコンピューターグラフィックスも優秀だろうと勝手に決めつけているだけではないか、と思ってしまいます
製作コストの安さだけは確かのようで、「30分アニメの制作コストを比較すると、インドのコストはわずか6万ドル程度にとどまっており、米国やカナダ(25万ドル~40万ドル)に比べて圧倒的に安いのです。また、韓国・台湾(11万ドルから12万ドル)、フィリピン
(9万ドルから10万ドル)などアニメ制作を積極的に手がける周辺のアジア諸国と比べても割安感があります」と例示しています
ただ、低価格で下請けをこなすだけでは中国や韓国と大差はありません
自ら脚本を書き、演出し、キャラクターをデザインして原画を描き、1本の作品を完成させてしかるべき売上を確保できるようになれるか、が問題です
そこで上記の、「インドは映画作りの実績がある」と言いたいのでしょう
しかし、インド映画は製作本数こそ多いのですが、インド映画が世界を席巻している状態にはありません。あくまでもインド文化圏で人気を得ているだけです
そんなインド映画の実績がアニメーションに反映されると決めてかかるのはどうか、と思ってしまいます
記事ではインドのアニメーション「The Legend of Buddha」がアメリカのアカデミー賞長編アニメーション部門にノミネートされた(2004年)と紹介しています

The Legend of Buddha


この動画を見てどう評価するでしょうか?
作画を見ればこの作品がディズニー風の世界を目指しており、インドだけでなく広く世に向けて売りだそうとしているのは明らかです
ただ、それだけではどこまでいってもディズニーの亜流でしかありません
あるいは人物の表現、物語の展開など、随分と古臭く感じられます
2004年といえば、日本では宮崎駿の「ハウルの動く城」が公開された年です
「ハウルの動く城」と比べれば、たたみかけるような演出、ドラマチックな展開、人物造形の奥深さ、内面の描写などなどの点で、「The Legend of Buddha」は物足りなく感じてしまいます
ディズニーアニメに「登場人物の内面の葛藤の描写」を求めるべきではない、との意見も出るのでしょうが
インドのアニメーションがディズニーアニメの廉価版を目指し、その地位で満足するのならこうした作品を山ほど作ればよいわけです
ディズニーとは違う方向を目指すのなら、また別の表現方法を模索しなければなりません。例えば韓国のような3DCGを駆使した幼児向けアニメーション、という路線もあります
2004年以降、インドのアニメーションがどうなっているのか、情報をお持ちの方は是非、紹介してください

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