日中韓共同制作アニメ「金玉鳳凰」は空中分解
2004年のニュースで、「中国・日本・韓国の3国が3億円を共同投資するアニメーション映画『金玉鳳凰』プロジェクトが正式に調印され、このほど、シナリオ製作の段階に入った」と報じられたのを記憶されている方はほとんどいないと思います
マイクロソフトの古いワードで作ったファイルが読み出せなくなっていてたのを、パソコンを更新(HPのPavilion e9190jpの中古)したのを機会にマイクロソフトのWord Viewerをダウンロードし、パラパラと読み返しているうちにこの報道を再発見しましたので、取り上げます
中日韓でアニメ映画を共同制作へ 「金玉鳳凰」
中国・日本・韓国の3国が3億円を共同投資するアニメーション映画「金玉鳳凰」プロジェクトが正式に調印され、このほど、シナリオ製作の段階に入った。
同映画はアジアの三大アニメ大国それぞれの得意分野を結集する初めての映画。市場の共有も見込まれる。
ストーリーは中国の蔵族(チベット族)の民話を元に構成する。監督には、かつてアニメ「名探偵コナン」の劇場版を手掛けた日本人監督を起用。韓国と中国はそれぞれの得意技術を生かして製作を担当する。中国側による具体的作業は上海美術電影制作廠が担当する。
現在、3国の製作スタッフがシナリオの作成と修正を行っている。映画は2006年の年末年始に中日韓で同時上映される予定だ。
「人民網日本語版」2004年8月12日
記事には肝心の制作主体がどこなのか何も触れていません
日本と韓国、中国のアニメーション制作会社が調印したはずなのに名前が出ないというのは奇妙な話です
もうこの時点で嫌な予感がしたものですが、2006年に作品が公開されたとの報道もありませんでした
インターネットで検索してもこの人民網のニュースしか見つからず、日本のメディアが報道した様子もありません
結論から言えば、制作されないままプロジェクトは空中分解してしまったのでしょう
「名探偵コナンの劇場版」を手がけた監督と記事にはありますので、劇場版の7作品で監督・絵コンテを担当したこだま兼嗣を指すのだと思いますが、果たしてどこまで関わっていたのかわかりません
こだま兼嗣は2003年公開の劇場版「名探偵コナン 迷宮の十字路」の監督を最後にコナンシリーズから降板し、しばらく活動を休止しています
ですから2004年の時点ではフリーな立場だったわけで、この日中韓合作アニメのプロジェクトに加わっていたとしても不思議ではありません
さて、これだけではあまりに情報が不足していますので、作品タイトルから幾つか推測を書き述べます
タイトルの「金玉鳳凰」とは中国チベット族に伝わる民話集であり、その中に含まれる「斑竹姑娘」を題材にしアニメーション化しようとした企画だったと思われます
「斑竹姑娘」は竹から生まれた娘が求婚者にさまざまな難題を示し、これを退けるという物語で、「竹取物語」と同じルーツを持つと考えられています
Wikipediaによれば、研究者の間では「竹取物語」がチベットへ伝播して「斑竹姑娘」になった説と、原型となる物語があってそれぞれが「竹取物語」や「斑竹姑娘」になったという説があり、決着はついていないそうです
そんな背景をもった物語を作品化しようと試みたと推測して、作品の舞台が中世なのか現代なのか、チベットなのか架空の国なのかも不明ですが、おそらくは脚本段階でまとまらず関係者が投げ出してしまったのでは?
韓国なら最新のCGグラフィックスを使った安っぽい幼児向けアニメに仕立てようとするのでしょうし、日本ならかぐや姫(とは限りませんが)の抱える葛藤を描くことを中心にした心理劇+アニメーションならではのスケール感を表現しようとするのでしょう。中国は極力、チベットの民族色を薄めようとするのかもしれません
互いの思惑が違いすぎるので噛み合わないのは目に見えます
誰が企画し、推進したプロジェクトなのかは分かりませんが、それぞれの国のアニメーション事情を見れば最初から無理な話だった気がします
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