「宮崎アニメは父権社会批判」と主張する中国の意見

いつもトンチンカンな記事を配信しているサーチナからの引用です
サーチナでは中国人ブロガーの個人的見解を記事として取り上げ配信しているのですが、その中身・主張を吟味していないためか、奇妙で奇抜な意見が登場します
今回は宮崎駿のアニメーション作品を、「父権社会批判であり、女権主義を最高の形で体現させている」と批評する意見が記事になっています

宮崎駿アニメを中国人が分析「女性の視点で父権社会を批判」

「宮崎駿は女性至上主義者。ほとんどの作品の主人公は女性か少女で、彼女たちは希望や善良さ、力や美しさなどの象徴として描かれている。ヒール役の女性も、強い権力者として描かれている」と説明。
「『風の谷のナウシカ』から『崖の上のポニョ』に至るまで、女性の主人公たちは女性らしさと男性らしさの両面を兼ね備えている。女性らしい柔和さと同時に、危機的場面では男性らしい力強さを発揮する。宮崎駿は、女性の視点で父権社会を批判しているのだ」と分析した。
その上で「風の谷のナウシカ」、「千と千尋の神隠し」、「もののけ姫」の3作品についてさらに分析を行った。
「ナウシカは結末で神格化され、いわば女権主義を最高の形で体現させる。千尋は平凡な少女として描かれるものの、ストーリーが進むにつれて無限の潜在能力を発揮させる。男性である川の神・ハクを助け、女性の潜在能力の大きさを表現した。もののけ姫では女権と男権の闘争は続いていくのだという含みがあった」。
文末では、ブロガーは「宮崎駿作品は女性を決して弱いものと描かず、女性の地位を肯定している」と結論付けていた。


宮崎駿が読んだら苦笑いするのではないでしょうか?
父権社会を批判し、母権社会を肯定するためにアニメーションを作っているわけではなく、単に美しさと強さを備えたヒロインを描きたいから描いているだけなのだと思うのですが
もちろんハリウッド映画にありがちなヒロイン像(主人公である男性に助けられる女性という役割であり、非力な存在として描かれる)とは大いに異なっています
「風の谷のナウシカ」は一族の長の娘という立場であるナウシカを主人公にしています
が、物語の展開を見ればナウシカが女性であろうと男性であろうと大して違いはありません
コミック版「ナウシカ」では、巨神兵にオーマを名を与え母親として接します
しかしナウシカが男性で、巨神兵に名を与えた上で父親として接したとしても、物語の展開は大きくは変わらないと考えられます
単に宮崎駿が自分の好み、理想とする女性の姿をヒロインに投影しているだけであって、父権社会がどうのこうのという主張があるとは思えないのです
女性を主人公にするのは、「その方が萌えるから」と言うしかないのでしょう
おそらく宮崎駿は巷にあふれる「萌えアニメ」を否定する考えの持ち主だろうと推測されますが、彼自身が「萌えアニメ」の先駆者であるのは確かです
繰り返しになりますが、宮崎駿は男性社会と女性社会の対立やら葛藤を描こうなどとは考えておらず、中国人ブロガー(おそらくは女性?)の強引な解釈には首を傾げるしかありません。かなり特殊な社会観の持ち主なのでしょう
アニメーション作品をどのように鑑賞しようがそれは自由です。しかし、批評として語る場合には、当然その主張に対して賛同もあれば異論も出ます
上記の記事を読む限り、中国人ブロガーは自分の社会観を語りたいがために宮崎駿の作品を借りているだけなのではないか、と感じます

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