渋谷ライブハウス放火未遂事件を考える1 殺人の衝動

8月31日の夜、渋谷のライブハウス「チェルシーホテル」で催涙スプレーを撒いて逮捕された島野悟志容疑者(23)は、ガソリンで放火も企てていたと報道されています


東京都渋谷区のライブハウスに8月31日夜、ガソリンがまかれた事件で、殺人未遂容疑などで現行犯逮捕された無職島野悟志(さとし)容疑者(23)(大阪府茨木市)が警視庁の調べに、「事件を起こすため東京に来た」と供述していることが、捜査関係者への取材でわかった。
島野容疑者は8月21日に自宅を出る際、家族に「ちょっと出掛けてくる」と告げて近場への外出を装い、上京後にガソリンやこれを持ち運ぶ携行缶を買いそろえていた。同庁は、島野容疑者が自宅を出る前から、無差別大量殺人を計画していたとみて調べている。
捜査関係者によると、島野容疑者は逮捕時、果物ナイフと柳刃包丁各1本と数本の催涙スプレー、さらに数万円の現金を所持していた。ガソリンと携行缶は8月30日から事件直前にかけて、現場近くなどで購入したことが確認されており、同庁は、包丁やナイフ、催涙スプレーも上京後に購入したとみている。
(読売新聞の記事から引用)


放火したなら出入口が一箇所しかない地下のライブハウスなので大惨事になっていたはずであり、犯罪史上稀な無差別大量殺人になったに違いありません
もとより島野容疑者にライブハウスやその観客に対する怨恨はなく、人の集まる場で多くの人を殺害しようという殺人の衝動に駆られた行動です
島野容疑者は17歳のとき、公園で遊んでいた4歳の男児の頭をハンマーで殴打し、重傷を負わせる事件を起こして少年院に送致されています
当時から殺人の衝動を心の中に宿していたのは明らかですが、少年院の矯正教育がこうした衝動の解消・緩和に役立ったのか疑問です
一般にはこうした少年の殺人(殺人未遂を含む)は、「命の大切さが分かっていないからだ」と言われますが、命の大切さを理解出来ないから殺人衝動に駆られるとは限りません
「命の大切さ」という情報を吹き込む教育を施せば、殺人衝動が解消ないし緩和されると少年院が考えているのでしょうか?
この辺りは是非とも問い質してみたいところです
非行少年の行動について、教育学では誤った学習の結果であると考えます
つまり正しい学習によって正しい情報、行動を習得させれば問題は是正される、と考えるのが基本的な立場であり、こうした前提の上に少年院の矯正教育は成立しているのです
が、そうした働きかけが心の内奥にある殺人衝動を解消させられるのか、自分は疑問に思うのです
たとえば大阪教育大附属池田小学校で小学生を襲った宅間死刑囚のような人物に、いくら「命の大切さ」を説いても行動が改善されるとは考えられません
宅間死刑囚は精神異常ではなく、善悪の判断もできたとのですが、それでもなお幼いこどもたちを1人でも多く殺してやろうとする衝動を内に宿していました
むしろ「命を大切さ」を理解していたからこそ、踏みにじってやろうと考えていたとも言えます
島野容疑者が少年院でどのような教育を受けたのか、どの程度の矯正効果があったのか、裁判が始まれば法務省が明らかにするのかもしれません
その上で何か必要なのか、何が足りないのか、大いに議論されるべきでしょう

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