日米合作アニメ「アニマトリックス」の成否

日本がアニメーション作りで生き残るためには海外の製作会社と積極的に手を組むべきだ、と主張するジャーナリストや経済評論家がいます
これまでフランスや中国、韓国との合作によるアニメーション作品をいくつか紹介してきましたが、ビジネス面は別にして、作品自体が成功と呼ぶに値する出来になっているものはあまり多く無いように感じます
今回はアメリカとの合作である「アニマトリックス」を紹介します
ウォシャウスキー兄弟による映画「マトリックス」の成功を受け、「マトリックス」の世界をアニメーションで表現しようと、オムニバス形式の短編9作品から作られたのが「アニマトリックス」です
日本からはマッドハウス、STUDIO 4℃などが製作に加わっています

アニマトリックス


映像はなかなか斬新ですし、日本のアニメーション製作会社が手がけているのですが、見事なまでにアメコミ風の画になっています
これをみなさんはどう評価するのでしょうか?
ハリウッド好みの画になっているのですから、市場のニーズに合致した作品を提供できたと見るべきで、ビジネス戦略としては正しいのでしょう
「アニマトリックス」のDVDは、日本で発売されてから6日で10万枚を突破する売れ行きであり、ビジネスとしては十分に成功した作品です
しかし、ビジネス戦略としては正しくても、日本の視聴者はかなり辛辣な評価を下しており、作品に魅力を感じない人が多いようです

アニマトリックス みんなのシネマレビュー
それぞれ映像表現は奇抜で斬新できらきら光ってはいるのが、それぞれ短く説明不足でマトリックスの世界観、ストーリーを知らずに見ると??の内容がほとんど。
そもそも、マトリックスのアナザーストーリー集的な製作意図から仕方がないとは思うが、ストーリーや論理性を無視した感覚に頼る絵作りや見せ方に徹して、単品作品としてもちゃんと凄さが分かるようにして欲しかった。
単品でも見ても良さそうなエピソードもあったが、逆にマトリックスの世界観で見るもの感じ方の幅を縛ることになってしまい逆効果なのかもしれない。
ま、このような作品の発表の場は少ないこと考えると、これはこれで意味のある映画だったのかもしれない。

ところがamazon・USAのレビューを見ると、全体の7割の人が5段階評価で4以上の高い評価点を与えており、ウケがよいのです
レビューの一部を引用します

間違いなくこの「アニマトリックス」はマトリックスの世界観の新たな情報であり、映画では補えないエピソードを与えてくれます。
アニメーションは素晴らしく、サウンドも効果的です。十分に見るだけの価値があります。
ワイルドなアニメーションと特殊効果によるイメージが楽しめます。
ただ、暴力的ですから、子供には適切とは言い難いところがあります。12歳以下の子供には試聴せさせるべきではありません。
現実と映画の区別ができる大人と、成熟したティーンエイジャーには素晴らしい作品です。

アメリカの視聴者にとって「アニマトリックス」は実にエキサイティングな作品に映ったようで、日本の視聴者の反応とは随分違います
そもそも、「アニマトリックス」を作った意図は何だったのでしょうか?
自分が勝手に想像するに、「マトリックス」の設定や世界観を利用してゲームやアニメを次々と生み出し、一大コンテンツとして儲けるのが狙いだったと思います
アニメーションによるさまざまな作風の「マトリックス」をテストピースのように並べ、そこからこんなゲームやあんなアニメーション作品を派生させられますよ、とゲーム会社やアニメーション制作会社にアピールしたかったのでしょう
その思惑が成功したのかどうかは知りません
ともあれ、日本のアニメーター、アニメーション製作会社がその気になれば、アメリカの視聴者の嗜好に適う作品を作る能力があると証明できたのは間違いないのでしょう(それは必ずしも日本ではウケないのですが)

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