フランスの本気アニメ「オーバン・スターレーサーズ」

いくつか日本と外国企業の合作アニメーションを紹介してきました
ビジネス上の制約から、日本のアニメーションが生き残るためには海外の企業と手を組むべきだ、とする考えがあるのですが、実際には成功した作品がほとんどない状態です
今回紹介する「オーバン・スターレーサーズ」も日仏合作ですが、ビジネスとして成功したかはともかく、そこにはフランスの本気が感じ取れます
元々はフランスの映像製作企業が2001年に発表したCGによるパイロットフィルムが下敷きになっており、日仏合作でテレビシリーズをやろうという話になったようです
監督、アートディレクター、脚本、メカニックデザインなどフランス人スタッフが担当しているのですが、何と彼らは日本に移り住み、2年以上もの歳月をかけてこの作品を完成させました
タイトルにわざわざ「本気」と書いたのはそれ故です

二重の意味持つ日仏合作「オーバン スターレーサーズ」

各話の絵コンテ、演出、作画は日本人スタッフが担当しており、作品のクオリティには不満がありません。ただ、「何を見せたいのか?」がいまいち伝わってきません

第23話



モリーが家族を取り戻そうと考え、そのために闘っているのは分かりますが、それだけなのでしょうか?
「地球に迫る危機」といった大人の事情はともかくとして、脚本が弱いように感じます
元々の原作は、「宇宙でレースをする女の子」という設定だったのでしょうから、モリーの家族の事情などは後付の設定なのかもしれません
上記のレビューではしきりに、「古き良さ」なるものを強調しているのですが、何を言いたいのか分かりません
設定や世界観、キャラクターに頼らず、登場人物がしっかりと芝居をしている=ドラマを作れている、と指摘しているのでしょうか?
まだ、「友情、努力、勝利」のコンセプトで話を構成した方がすっきりとした、快活なストーリーに仕上がったように思います
あるいはもっとボーイ・ミーツ・ガールの要素を前面に打ち出し、モリーの恋と成長を中心に描くとか、やり方はあったように思います
全26話のテレビシリーズで、中国や韓国のアニメのような露骨な手抜きもなく、丁寧に作られているのは認めますが、それだけにもったいない気がします
モリーのチームメイトが、「One Piece」のルフィーかゾロのような男だったら、胸が熱くなるようなドラマチックな展開も期待できたはずです
せっかくの日仏合作なのですから、ストーリーコンセプトをもっと突き詰めて話し合ってもらいたかったように思います(話し合った結果がこれなのかもしれませんが)

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