日中合作アニメの超大作「三国演義」
日本と海外のアニメーション製作会社との合作による作品を紹介しています
日本のアニメーション産業が生き残るには、海外の企業と積極的に手を組むべきだとの主張があるわけですが、必ずしも成功しているわけではありません
今回は中国との合作である「三国演義」を紹介します
2009年に完成した「三国演義」は、4年の歳月と6億円の製作費で全52話というテレビ向けシリーズです
日中合作アニメ「三国演義」が完成!総製作費6億円、全52話の超大作
記事によれば中国側がキャラクターデザイン、動画、脚本を担当し、日本側がストーリーボードを担当したとあります
ストーリーボードとは絵コンテであり、演出を指します
中国にとって「三国志」は自分たちのものだとの思いがありますから、キャラクターデザインから衣装や甲冑など、自らの手でやりたかったのでしょう
中国人には京劇などで育まれた英雄・豪傑のイメージがあり、日本のアニメやゲームで描かれる三国志の武将には違和感があるものと思われます。張飛のようにでっぷりと太った体型の方が、中国人には豪傑らしく見える、と耳にしました
中国の放送関係者にすれば、自分たちが望む「三国演義」を形にできたのですから十分満足できる仕上がりなのでしょう
ストーリーが進んで大規模な戦いの場面も増えるのですが、そちらの作画はあまり褒められたものではありません。壮大なスペクタクルをアニメーションで表現するだけの技量はないようです。もちろん予算の制約もあるわけですが
ちなみにこの作品は日本でも2010年に「最強武将伝 三国演義」のタイトルでテレビ放映されたのですが、余り話題にはなりませんでした
日本語版は次のようになっています
さらに日本側から製作に加わったフューチャー・プラネット(株)ですが、2010年10月に負債10億円を抱えて倒産しており、利益にはつながらなかったようです
さて、比較のために横山光輝原作による「三国誌」の動画を貼っておきます
1991年の作品なので古さは感じられますが、日中合作の「三国演義」と比べても見劣りはしません
「三国演義」のでっぷりとした張飛ではなく、精悍な張飛が描かれています
中国の人達からすれば不満もあるのでしょうが、これはこれでよくできた作品だと思います
さて、今後とも日中で合作のアニメーションが作られると思いますが、どのような方向を目指すのでしょうか?
「三国演義」のような歴史物なら互いの価値観や歴史観が対立もせず、すんなりと合作も可能なのですが、現代社会を舞台にした作品などは政治体制の違いもあって難しいのではないかと思います
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