人気爆発の中国アニメ「「麦兜響当当」は産業化のモデル?

毎回、中国や韓国のさまざまなアニメーションと、そこに垣間見える中国や韓国の思

惑について言及しています

今日は2009年の劇場版アニメーションとして公開され、大人気となった中国の「「麦

兜響当当」を取り上げます

人気爆発の「麦兜」 中国アニメ産業のヒントに
http://japanese.china.org.cn/culture/2009-08/04/content_18262156.htm


「なんだ、ゆるキャラかよ」と突っ込みたくなる方が多いと思います

中国を代表する2大アニメコンテンツが子豚の「麦兜」と子羊の「喜羊羊」という擬人化

動物キャラだ、というのが現状のようです

そして単純明快なストーリー、きわめて簡略化された(お金をかけない)作画…

それでも中国メディアはこれがアニメ産業のお手本だと激賞しています


「私たちは、市場を一番大切にしており、何を作るかを市場のメカニズムによって判断
しなければならない。もちろん、私たちもメディアとしての責任感があり、低俗なものに
は絶対に手を出さない。『麦兜』が伝えているのは、単純、楽観、善良である。時代が
変われば、映画の伝え方も変わる必要があり、今の人々の生活により近く、受け入れ
られやすい方式を取り入れるべきである」


「何を作るかを市場のメカニズムによって判断しなければならない」という前提部分だけ

で、宮崎駿や押井守、大友克洋、富野由悠季らは激怒し、机を蹴飛ばすに違いありま

せん。あとは「バカか、こいつ」の大合唱でしょう

「市場のニーズを分析し、真に視聴者が求めているものを提供しなければならない」な

どという発言は、頭の悪い経営コンサルタントの決まり文句です。それでアニメーション

が成功するなら誰も苦労しません

もっとも、最近の日本のアニメーションのように「メイド、ツンデレ、厨二設定」というテン

プレ化した萌えアニメのオンパレードも困ったものですが、それは別の話です

話を戻します

低年齢児童を対象としたほのぼのアニメも悪くはありませんが、中国の視聴者がそれ

ばかりを求めているわけではありません。中国の「市場のメカニズム」が動物を擬人化

したゆるキャラによるほのぼのアニメを求めている、と結論付けているのなら大間違い

でしょう

市場のメカニズムなど考えていないのは明らかで、「それしか作れない」のです

「中華版マクロス」と呼ばれるロボットアニメや、「遊戯王」と「ヒカルの碁」を混ぜたよ

うな「チャイニーズ・チェス・マスター」などあれこれ試しているわけですが、中国の視

聴者は必ずしも満足していないはずです

中国のアニメーションファンが本物の「マクロス」や「ガンダム」を見て、「ヒカルの碁」

や「カード・キャプターさくら」、「美少女戦士セーラームーン」を見てしまった今、中国

の魅力ないキャラ、粗雑な作画のアニメに満足できるわけがないのです

といって現在の中国に、「狼と香辛料」や「GOSICK」のようなアニメーションが作れる

はずもなく、ただ「麦兜」と「喜羊羊」の成功例だけに目を向け、「市場のメカニズムに

従った結果だ」と頭の悪い経営コンサルタントのような口調で現状を肯定し、自らを慰

めているだけの話です

中国のアニメーションファンを対象に市場調査を行えば、中国アニメに対する罵倒、呪

詛、揶揄で埋め尽くされてしまうでしょう

ところで、中国のアニメーション事情については繰り返し「情報が少なくてよく分かりま

せん」と繰り返してきたのですが、インターネットで検索をかけ、掘り下げるとさまざま

な情報に遭遇します

ジェトロによる調査報告書もあります。PDFファイル形式なので、興味のある方はダウ

ンロードして目を通してください

中国アニメ市場調査(アニメーションのテレビ放送等に関するジェトロのリポート)
http://www.jetro.go.jp/jfile/report/.../05000973_008_BUP_0.pdf

ビジネス展開についてのレポートもあります。いかに売り込むか、という話なので一般

的なアニメーションファンの方には縁のない内容ですが

日本製アニメーションの中国展開方策の事例と検証
http://www.dcaj.org/dcaj_news/no148/dreport/article02.html

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