中国3Dアニメの成功例「秦時明月」
中国アニメを何度か紹介しています
動物擬人キャラによる低年齢児童向けばかりが目立つ中国アニメの中にあって、大人も楽しめる作品といえば武侠物でしょう
中国で「成功したアニメ」とされるのが今回取り上げる「秦時名月」です
TVシリーズも4シーズン目に突入しており、中国だけでなく世界30ヶ国で放送されているのだそうです
製作費12億円超のCGアニメ 注目の中国CGスタジオ講演
製作費1億元(12.5億円)をかけた大作CGアニメーション『秦時明月』と上記の記事では紹介されているのですが、これは4シーズン分の製作費を指すのでしょうか?
日本ではTVシリーズだと1話分の製作費が2千万円と聞いたことがあります
秦時名月 第一部全集
作画に力が入っているのは分かりますし、構図にも工夫が感じられます
しかし、山場である対決場面を見ると「?」と思ってしまいます
闘いのシーンが長くて、何を見せたいのかよく分かりません。前にも「秦時名月」を紹介したときに書いたのですが、剣が敵を目指して走るカットをやたら長映しするのも疑問です
ところどころに墨絵のような静止画を挿入しているのは作画の手間を省くためでしょう。工夫と言えなくもありませんが、繰り返されるとウザいだけです
白黒で見せた動画を、数分後には赤白の彩色で使い回しており、これも手抜きです
格闘シーンをどうカッコよく見せるか、よく分かっていないため無駄なカットを挿入しているように感じられてなりません。竜がくねっている動画も繰り返し挿入されているのですが邪魔です。1回使えば十分でしょう
そして無駄に登場人物の顔のアップが何度も登場します
闘いを見守る人たちも棒立ちで、表情に変化がありません。目は動いていますが、いかにもCGの人形っぽい姿です。闘いを見守っているのですから手に汗握るとか、体が震えるとか、背筋が凍るとか、もっと反応を目に見える形で示すくらいの描写が必要でしょう
せっかく作画のクオリティが高いのに、演出がダメダメで生かしきれていないのが残念です
さて、この「秦時名月」は、「海賊版が溢れる中国でDVD販売1万枚といった実績を残すなど新世代のアニメビジネスの旗手とされている」のだそうです
しかし、DVDが1万枚というのはシリーズ累計なのでしょうか?
1シーズン24話で4シーズン目突入なのにDVD販売が累計で1万枚、という数字を成功例だと紹介されても、首をかしげるしかありません
ちなみに日本のテレビアニメのDVD・ビデオ販売数は以下のとおりです
歴代TVアニメ作品累計平均売上ランキング(期間1988年頃~2010年11月15日付)
*1位 175255 The World of GOLDEN EGGS
*2位 174353 新世紀エヴァンゲリオン
*3位 172432 The World of GOLDEN EGGS “SEASON 2”
*4位 *81499 機動戦士ガンダム
*5位 *79639 機動戦士ガンダムSEED DESTINY
*6位 *78554 化物語
*7位 *72038 涼宮ハルヒの憂鬱 New!
*8位 *71134 機動戦士ガンダムSEED
*9位 *57689 海がきこえる
10位 *54994 機動戦士Zガンダム
11位 *52923 ドラゴンボールGT
12位 *52900 鋼の錬金術師
13位 *52284 ウサビッチ
14位 *50552 コードギアス 反逆のルルーシュ
15位 *46147 マクロスF
16位 *45023 カウボーイビバップ
17位 *44012 機動戦艦ナデシコ
18位 *43830 けいおん!
19位 *43540 機動戦士ガンダム00
20位 *42690 コードギアス 反逆のルルーシュ R2
経済ジャーナリストは好んで「人口13億人の巨大な中国市場」と表現しますが、アニメーションに限れば、日本の方がはるかに巨大な市場です
高価なアニメのDVDボックスやブルーレイボックスを大人買いするファンが大勢いるのですから
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