舞鶴女子高生殺害事件を考える3 無期懲役判決

平成20年5月に京都府舞鶴市の女子高生小杉美穂さん(15歳)が殺害された事件で、京都地方裁判所は被告の中勝美に対し無期懲役の判決を言い渡しました
事件としては一区切りついたわけですが、何とも嫌な展開でした


舞鶴・女子高生殺害:京都地裁が無期判決
京都府舞鶴市で08年に府立高校1年の小杉美穂さん(当時15歳)が殺害された事件で、殺人と強制わいせつ致死の罪に問われた中勝美(なかかつみ)被告(62)に対し、京都地裁は18日、無期懲役(求刑・死刑)を言い渡した。笹野明義裁判長は「被告が被害者の遺留品の特徴を知っていたことから犯人であることが強く推認される」とし、「犯行態様は冷酷残虐だが、周到に計画したり、ことさらに残忍な殺害方法を選択した事案とは異なり、死刑の選択がやむを得ないとまでは言い難い」と量刑理由を述べた。被告側は控訴する。
公判で被告側は一貫して無罪を主張。被告と事件を結びつける直接証拠がない中、防犯ビデオの画像鑑定や目撃証言など、検察側が積み重ねた状況証拠をいかに評価するかが最大の焦点となった。
判決は、現場に至る道路で被告と被害者を見たとする目撃者2人の証言の信用性を認め、道路沿いの3カ所にある防犯ビデオの画像も目撃証言と合わせて検討し、「映っている男は被告であり、犯行現場近くに犯行時刻に近接した時間、被害者と一緒にいた」と認定した。一方、検察側の画像鑑定は「単なる印象に基づくものが多い」として証拠能力を認めなかった。
続いて被害者の遺留品を詳細に説明した被告の供述について検討。「自発的にされたと認められ、供述を求めた捜査官に違法なものはない」としたうえで、「非公表の特徴と合致する具体的な供述で、知る機会があるのは犯人の他にはほとんど考えられない」と検察側の立証に沿う判断をした。
量刑について笹野裁判長は「経緯、動機に酌むべき点はない」と指弾したが、「同種前科の刑期終了後は暴力的犯罪を行っておらず、偶発的な面もある」などとして死刑回避の理由を述べた。
事件は裁判員制度の施行約1カ月前に起訴され、裁判官3人が審理した。【古屋敷尚子】
◇状況証拠での判断 厳密な説明必要
京都地裁は状況証拠の積み重ねによる立証を認め、無期懲役を言い渡した。和歌山毒物カレー事件(98年)や仙台・筋弛緩(しかん)剤混入点滴事件(00年)と同様、直接証拠がない中で有罪を導いた。
状況証拠による立証について最高裁は昨年4月、「犯人でなければ合理的に説明できない事実関係が必要」との基準を示した。同年12月、鹿児島夫婦殺害事件(09年)の裁判員裁判はこの基準を踏襲し、現場から被告の指紋が出ていたが無罪(求刑・死刑)を言い渡した。
今回の判決では、防犯ビデオの画像と目撃証言を合わせ、検察側が主張する被告と被害者の事件前の足取りを認定し、被害者の遺留品に関する被告の供述調書も「自発的なもの」と認めた。しかし、ビデオ画像が不鮮明だったことには言及せず、別人物が犯行に及んだ可能性については「想像し難い」と説明しただけで、最高裁基準を厳密に検討した形跡は見られない。
今回の公判が裁判員裁判なら裁判員は相当悩むだろう。取り調べが可視化されていない中、捜査機関と裁判所には状況証拠に基づく判断について厳密で丁寧な説明が求められる。
(毎日新聞の記事から引用)


中勝美被告の犯行を直接裏付ける物証がない裁判でしたが、裁判所は防犯カメラに映っていた被害者と一緒にいた人物を、「目撃証言と併せ考えると中勝美被告であると認められる」と判断しました
さらに捜査段階の中被告の供述も、犯人しか知りえない被害者の所持品について語っており、「秘密の暴露である」と判断しました
捜査を撹乱しようと狙った中被告が、「知人が女性のポーチを捨てるのを見た」と語っていたのですが、被害者がポーチを所持していたのは殺害した犯人しか知らなかった事実ですから、結果として中被告は自分が犯行に関わっていたと認めた形になったのです
警察相手にペラペラしゃべったのが運の尽きです
中被告が容疑者としてマークされたのは、前にも当ブログで書いたように彼には女性を暴行し服役した過去があったからです。中勝美は25歳のとき、2人を殺害して懲役14年の刑を受けています。当時の裁判がどのようなものであったのかは不明ですが、2人を殺害しておいて懲役14年とはいかにも甘すぎる判決です
ところが一部のメディアは中被告の前科にも触れず、逮捕の際に、「冤罪だ」と決めつけ、証拠はないと強調する報道をしていました
また、一部のブロガーも「冤罪説」をブログで展開していたものです
いまさら個人のブログを取り上げ、「冤罪説」を批判するつもりはありませんが、こうした冤罪説にすぐ同調し、被告を受難者のごとく祀り上げる人たちは本物の犯罪者と対峙した経験のない人たちなのでしょう
関心のある方は「舞鶴女子高生殺人事件 冤罪」で検索すれば、いくつものブログが見つかります
こうしたブロガーは、「善良な市民がある日突然、証拠もないのに殺人犯として逮捕された。許せない」と短絡的に思い込んでしまう人たちです
中勝美の人生を知れば、この人物が善良な市民などとは言えない、どす黒い欲望を抱えた男だと分かるはずです
今回の事件の舞台となった舞鶴市では、7年前にも女子高生が殺害されており、犯人は逮捕されないままになっています
そちらの事件も中勝美の犯行ではなかったのか、再捜査をしてもらいたいところです

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