米下院議員銃撃事件3 犯人の狂気
アメリカのアリゾナ州でギフォーズ下院議員を含む20人を負傷させた銃撃事件の犯人について、ニューズウィークが記事を書いています
米下院議員を銃撃した男の心の闇
記事では事件を起こしたジャレット容疑者の狂気について、その証拠を並べ上げています
コミュニティーカレッジで詩の授業を受けていたジャレット容疑者は意味不明な発言を繰り返していた、と記事では指摘しています
こうした部分だけを切り取れば、統合失調症の可能性が考えられます
「第2の合衆国憲法を読んだ結果、私は現在の政府を信用しない。政府は文法を操作することで人々を洗脳し、マインドコントロールしている」、「イヤだ! 私は金と銀の裏づけがない通貨では借金を払わない! イヤだ! 私は神を信じない!」との発言は妄想念慮に取り憑かれていたように伺われるのですが、それだけで統合失調症だと断定するのは誤りでしょう
ヴァージニア工科大学で銃の乱射をしたチョ・スンヒも大学で作家になるため文学系の授業を受講し、殺人と強姦が展開されるおどろおどろしい物語を書き綴っていたとされます。そこには狂気が垣間見えるのですが、彼はそれでも規則正しい生活を送り、大学内のスポーツクラブで筋力トレーニングに励んでいました。チョ・スンヒは自殺してしまったため、彼が精神疾患だったかどうかは謎のままですが、統合失調症だった可能性は低いと思われます
むしろ、無差別殺人を実行するため体を鍛え、銃を手に入れ、着々と準備を整えていたのですから、十分正気だったと考えられます(社会への復讐という狂気を発現させるためにかろうじて正気を保っていた、と表現した方が適切かもしれません。目的意識、使命感だけが彼を支えていた可能性があります)
記事にもありますが、ジャレット容疑者の蔵書にヒトラーの「我が闘争」が含まれていたそうです。コロンバイン高校で銃の乱射をした2人の生徒もヒトラーを崇拝していたと指摘されています
しかし、コロンバイン高校の生徒にしろ、ジャレット容疑者にしろ、ヒトラーの著作を本当に読んでいたのか、その思想をどこまで理解していたのかは不明です。思想を理解していたのではなく、大量殺戮をやったヒトラーの狂気に共鳴し、共感していただけなのかもしれません
思想を理解するのには時間も手間もかかりますが、狂気に共鳴するのであれば時間も手間も必要ないからです
日本でも大阪教育大付属池田小学校で無差別殺人をやった宅間死刑囚が、自宅にヒトラーの「我が闘争」を置いていたそうですが、彼が本当にこの本を読んでいたのか疑問です。ただ興味本位で買い求めただけなのかもしれません
あるいはコンプレックスとして、自分はこんな難しい本も読んでいるのだと気取るため所持していたにすぎないとも考えられます
単に本を所持していたという事実だけから、ヒトラーの影響を受けたと決め付けるのは誤りです
ジャレット容疑者の狂気がどのように形成されたのか、解明するにはまだまだ時間が必要でしょう
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