耳かき店員殺人を考える3 孤独な四十男
いつもは産経新聞の「法廷ライブ」をベースに書くのですが、視点を変えるため毎日新聞の記事を参考にします
被告に「自己愛の強さ」
毎日新聞の記事は林被告の日常の暮らしについての供述の引用で始まります
「『1人暮らしですから掃除、洗濯をしました。本屋に行き、買った本を喫茶店で読みました。夜はテレビを見て寝ました』。林貢二被告(42)が週末の過ごし方を説明するのを聞き『自分と同じだ』と思った。どこにでもいそうな独身男性が、なぜ凶行に走ったのか」
毎日新聞の記者を責めるつもりはありませんが、「どこにでもいそうな独身男性」という見方からして先入観に染まっていると指摘できます
会社では真面目に勤めていたとありますが、職場を離れれば友人もなく、1人でテレビを見て過ごす・・・という暮らしです。これがどこにでもいそうな独身男性なのでしょうか?
酒を飲まない林被告ですから、夜の街を飲み歩くという機会がないのは分かりますが、職場の仲間と風俗店に行ったりする機会はなかったのか、と疑問に思います
耳かき店は林被告がインターネットで見つけ、自分の意志で通うようになりました
今回殺害された江尻美保を指名し、3畳ほどの個室でおしゃべりをして過ごしていたようです。それ自体は異常な行為ではありませんが、週末は通いつめ、8時間も過ごすことがあったと言いますから、江尻さんを独占したいとの欲望がありありです
林被告は過去に女性と交際した経験はほどんどないのでしょう。客と店員という関係だと理解していても、それを超えた恋愛感情を一方的に抱くようになったと考えられます
林被告は「恋愛感情はなかった」と頑なに否定しています。この否定発言の意味については前に取り上げ、自分の解釈を述べました
この林被告の頑固さ、思い込みの強さを裁判官及び裁判員は読み誤っているのだろうと強く感じます
職場では真面目で酒も飲まず、寡黙な四十代の男性というイメージからしか林被告を見ていないためでしょう
林被告の実態は融通が利かず、思い込みが激しくて一方的な物の見方しかできない、偏りある性格の持ち主だと言えます
人格障害とまでは言いませんが、柔軟に人と対応し、折り合いをつけられるタイプではないと思います。孤独なのではなく、人と交わるのが苦手だから1人でいるわけです
相手の女性(殺害された江尻美保さん)が何を感じ、どう思っているのかを推察することもできず、一方的に通いつめ、駅で待ち伏せするというストーカー行為までしています
ストーカー行為をし、つきまとえばますます嫌われると一般人なら察しがつくところですが、林被告にはそれが理解できなかったのです
店への出入を禁止された林被告は、なぜ自分が出入り禁止にされたのか理解できなかったと供述しています
相手に迷惑をかけている、嫌われているとの実感も自覚もなかったわけです
職場で与えられた仕事をこなしている分には、林被告のこうした問題点は障害とならずトラブルを引き起こすこともなかったのでしょう。そのため「真面目に働いている人」という印象だけで済んだのです
しかし、職場とはまるで勝手の違う世界で女性相手に接する場合、融通が利かずまったく空気を読めない林被告はトンチンカンな言動に走ることがあったのでしょう
どこにでもいそうな独身男性、などという先入観に走り、こうと決めつけて見るのは大きな間違いです
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