アパートに放火 15歳少年逮捕
大阪府池田市で、アパートに一人暮らしをしていた15歳の男子高校生が自室に放火し、同じアパートに住む足の不自由な78歳の女性が焼死する事件がありました
「高校をやめたいといっても認めようとしなかった親を困らせため」に放火した、と説明されていますが、実に身勝手な犯行です
「アパートに火を付ければ人が死ぬのは分かっていた」と供述しているのですから、住民が火災に巻き込まれて死亡するのを承知の上で放火したわけです
記事の文末にある、「近くの女性は『少年はまじめでおとなしそうな印象だったのに…』とショックを受けた様子だった」とする表現にいちゃもんをつける意図はありませんが、15歳の少年がアパートでひとり暮らしをしている状況を見れば、十分にワケありだと察しがついたはずです
少年の両親は何を思って息子にひとり暮らしをさせたのでしょうか?
続報が入っていないので詳細は不明ですが、推測すればこの少年の家庭内暴力がひどく、親が身の危険を感じたために家から切り離そうとした可能性が考えられます
家庭内暴力に対応するためのマニュアルには、暴力を振るこどもを家から出してアパートに住まわせるか、暴力を受ける親(特に母親)を家から出してこどもから切り離せ、と指針が示されています
あるいは単純に、「ひとり暮らしをして苦労すれば親のありがたみがわかるだろう」という単純な意図から、息子をアパートに住まわせたとも考えられます
この辺の事情は続報が入らないと何とも言えません。特別な事情があったという可能性も捨て切れません
おそらく報道に接した多くの人は、「高校を中退したい」から「アパートに放火」という少年のとんでもない発想に驚き、眉をひそめただろうと思われます
脈絡を欠いた思いつきの犯行で、八つ当たりにもほどがあると感じたのではないでしょうか?
ですが、精神分析の側から見るとこの突飛な行動にも十分に意味があると考えらます
以下、詳細な事情が分からないのであくまでもモデルとして説明します
家(この場合はアパート)は自分を包み込むものであり、母親の胎内を象徴します自分を保護すると同時に行動を妨げ、時には重圧ともなる存在です
家庭内暴力はこうした自分を包み込む存在との闘いであり、家具を壊したり壁に穴を空けたり、ときには母親へ直接暴力を加えたりします
高校を辞めたいとか、登校を拒否するのも、自分を包み込んでいる制約(親が決めた生き方)への反発の延長だと考えらます
もちろん不登校には学業不振、いじめ、同級生との人間関係などなど個別の要因はありますし、そちらの目に見える要因の方が重視されるのですが
ですからアパートに放火して無関係な住民を巻き添えにし、死亡させるという突飛な犯行も、少年の中では怒りに任せて部屋の壁に穴をあける行為と大差はないのです
人を死亡させた事実は認識しているにせよ、その責任や、アパートの損害などは少年の頭の中にはありません(社会性が未熟なためそこまで思慮が及ばない、と表現すべきでしょうか)
目の前にあるもの、自分を包み込み圧迫しているものから逃れられればよいわけで、その先自分がどうなるか、など考えてもいないのでしょう
高校をやめたとしても、働いて自立しようなどこの少年が展望していたとは思えません
進学も就職もせず、ひたすら自室にひきこもる生活に陥った可能性があります
繰り返しますがこれはあくまでも解釈のためのモデルですので、事実がこのとおりだと言うつもりはありません
個別な、特殊な事情があれば当然、それを考慮する必要が生じます
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