詩の盗作を繰り返した女子中学生 その2
秋田県の女子中学生が盗作した詩を投稿し、コンクールなどに入選していた問題について、3度目の言及になります
いつものごとく「事件の動機」や「事件の原因」ではなく、「事件の意味」について問い、考えていきたいと思います
続報としては、「高岡・山町ポエム大賞」でもこの女子中学生の作品が大賞を受賞していたのですが、盗作だったとして取り消されたと報じられています(ニュースソースはテレビ局の動画サイトのため、すぐに消えてしまうと思いますが)
これで公式には5件目の盗作発覚ですが、他のコンクールでも受賞取り消しの動きがありますので、おそらくこの女子中学生の入選・入賞作品はすべて盗作だったという結果になるでしょう
精神分析の側から考えると、「盗作行為」は「倒錯行為」だと言えます
と言って、この女子中学生が「天才少女詩人」になりたかった、あるいは成りすましたかったと断言するのは早計でしょう
前にも書きましたが、彼女は何者かになりたいと欲し、何かを手に入れたいと欲し、何かを達成したいと欲し、その衝動が向かった先が詩の盗作行為だったのではないかと考えます
部活動でスポーツに汗を流す中学生もいれば、勉強に打ち込む中学生もいます。恋愛に夢中になったり、アイドル歌手を目指す中学生もいます
何に情熱を注ぎ、熱中するかは人それぞれですが、倒錯行為の衝動・エネルギーも本質としてはスポーツに打ち込む中学生の情熱と同じものでしょう
ただし、本人は自分の欲するものが何であるか、何を目指しているのか、明確に認識しているとは限りません
フランスの精神分析家ジャック・ラカンは「欲望はそれが望む方法で達成されるまで、繰り返し人を衝動へと駆り立てる」と指摘しています
万引きを繰り返す女性は何かを求め、それを手に入れたくて万引きを繰り返すのですが、自分が何を望んでいうのかを明確には認識していなかったりします。つまりこうした女性は欲望が満たされたと実感できるまで、繰り返し万引きに走るのです(ですが、自分が何を望んでいるのか分からないので、多くの商品を万引きしてもその欲望が満たされたと実感し、納得し、満足することはないのです。万引きした品は部屋に放り出されたままで手もつけない、という事態もあります)
倒錯行為とは自分が何を望んでいるのかを理解できず、衝動に駆り立てられるまま突っ走しる行為だと言えます
女性の下着を盗んで回る男性は、下着を手に入れるのが究極の目的だというわけではありません。何かを手に入れたくて下着を盗むのですが、その欲望はどれだけ下着を集めても満たされず、延々と下着を盗み続けることになります
話を盗作した女子中学生に戻します
元々彼女は読書好きで、詩が好きだったのかもしれません。インターネットで詩の投稿サイト見つけ、有名無名の詩人たちの作品を愛読していたのかもしれません
ですが、詩が好きだという人間が盗作に走るケースは稀でしょう
彼女の人格、生育歴などは不明なので仮説を立てるしかないのですが、盗作をしてまで何かを手にしようとする衝動は、彼女の中で育まれ増大し、制御できないまでに膨れ上がったと見られます
周囲に自分を「特別な存在」だと思わせたかった、という可能性も考えられます
人は誰しも「特別な存在」になりたいと欲しますし、それが他者と自分を分ける差異でもあるからです
自分が自分であるというアイデンティティを確立するため、人は長い青春期を過ごします
その結果、自分は「特別な存在」ではなく、「ありのままの自分」こそが自分なのだという自己像を受け入れ、納得し、思春期にピリオドを打ちます
彼女の場合、「特別な存在」になろうという衝動に駆られるあまり、「天才少女詩人」という虚構の存在へと突っ走り、挫折したのでしょうか?
外見からすればそうなのですが、もっと別の解釈があるのかもしれません
「未熟であるがゆえに盗作がこんな大問題になるとは分からなかった」と結論付け、お説教をしたところで、彼女の倒錯行為が止むとは限りません
神経症の治療モデルからすれば、自分を駆り立てていた衝動の正体を突き止め、自分が本当は何を望んでいたのかを理解すればその衝動から解放されるのですが
「事件の意味」という視点からすれば、彼女は倒錯した欲望ゆえに盗作行為を繰り返し、振り回され、破綻を迎えたのですが、自分の倒錯した欲望を本当に認識できたのかは不明です(おそらく彼女は自分の内なる欲望と向き合うのを拒絶し、それゆえ衝動からも解放されずに苦しみ続ける、という神経症のパターンに陥りそうな気がします)
周囲も事件には触れないようにし、「もう済んだ話だ」として片付けようとするでしょうが、彼女の中では何も終わっていませんし、片付いていないと思われます
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