詩の盗作を繰り返した女子中学生
盗作した詩を各種コンクール・新人賞に応募しまくっていた秋田の女子中学生の事件について、2度目の言及になります
昨年行われた柳川同市主催のコンクール「白秋献詩」でもこの女子中学生は最優秀賞「文部科学大臣賞」を受賞していますが、これも盗作が露見し賞を取り消されています
このコンクールでは今年も彼女の応募作品が「福岡県知事賞」を受賞してますが、こちらも盗作だったのでしょう。明るみに出ただけで4件目の盗作です
「盗作」の中3少女、福岡と前橋の詩コンクールでも賞取り消し
コンクールに応募したものの入選しなかった作品もあるのでしょうから、女子中学生が盗作してコンクールや新人賞に応募した詩は数十編になると思われます
つまり前にも書いたように「出来心でやった」レベルではなく、常習的に盗作を繰り返していたと断じてしかるべき状況です
コンクールによっては学校名、指導教諭の名前まで公表されているものがあります
指導教諭となった人物を責めるのは酷かもしれませんが、盗作の可能性に気がつかなかったのでしょうか?
日常的に接しているからこそ、教師はこの女子中学生の心情の揺らぎ・変化に気がつかなかったのかもしれません
女子中学生がコンクールに応募した作品はパクリ元の詩のタイトルそのままだったりします。タイトルで検索すればパクリ元がすぐに割れるのではないかと、幾つかの検索サイトで試みましたが、すぐには見つかりませんでした
プロである出版社も盗作が容易に見抜けなかったのは無理からぬところなのかもしれません
現代詩に詳しい人物の指摘では、作者がやすやすとその心情を吐露するような詩、いわゆる感傷を前面に出すような詩は現代詩として決して高く評価されない、との話です
この女子中学生の応募した詩は、どちらかと言えば心情を赤裸々に吐露するスタイルが多く、現代詩の評価基準からすれば論外のレベルになるそうです
審査する側からすれば、逆に赤裸々な心情を吐露するスタイルが新鮮に感じられたのかもしれません
柳川市主催のコンクールで文部大臣賞をとった詩は以下のとおりです
「葡萄」
一粒の葡萄が私の喉を通過してゆく
嗚呼、季節の間の匂いだ
滲んでいく夏と浮かび上がる秋の匂いだ
艶やかな甘酸っぱさに
わたしは秋の切なさを感じた気がした
そしてわたしは透き通る緑に
つるりとした夏を見た気がした
(甘いだけの果実じゃないのです)
そう、
甘いだけの感傷はないのだ
私は葡萄の甘酸っぱさを
壊さぬようにするりと飲み込んだ
もちろんこれもパクリです。タイトルも詩形もそのままであり、とても原作へのオマージュだとかリスペクトと呼べるようなものではありません
さて、なぜ盗作を繰り返したのかについて考えてみましょう
本人がその動機を明確に説明できる可能性は皆無ではありませんが、説明できたとしてもそれが事実かどうかは疑問が残ります
つまり万引きをする女性がその動機を説明できないのと同じです。「商品が欲しかったから」と言えばそれが動機のようにも見えます。しかし、万引きする女性は必ずしも本当に欲しい物を盗るとは限りません
何かを盗りたいとの衝動に駆られている場合があり、商品は何でも良かったりします
女子中学生の場合も、周囲から賞賛されたいとか、自分の存在を認められたいといった衝動に駆られていた可能性が考えられます
そのための手段がたまたま詩だったのでしょう(他にも理由はあるのかもしれません)
盗作が露見されないよう偽装したいのであれば、詩のタイトルを変えたり、詩句の語彙を別のものに入れ替えたり、詩形を変えるといった方法があります
しかし、判明しているところからすれば、そのような周到な偽装工作は見られません
つまり詩作という行為自体にほとんど思い入れがなく、偽装してバレないよう工夫する意図もなかったと推察できるのですが、断言するほどの判断材料はありません
原作の詩をいじることに抵抗を感じていた可能性もありますが、同様にこちらも断言はできるだけの根拠はありません
女子中学生が何を欲し、何を求め、何を手に入れようとしてたのかは、直接本人を分析しないと分かりません。ラカン派の分析モデルでは、女性はつねにファルスを求め、ファルスを手に入れようとしているのだ、と説明されます
ファルスが何を指し示すのかは個別の事例ごとに解釈します
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