村上春樹はなぜ芥川賞が取れなかったのか?

第143回芥川賞・直木賞贈呈式が行われたとのニュースがありました
この記事を読んだついでと言っては失礼なのでしょうが、長年気になっていた「村上春樹が芥川賞を取れなかったのはなぜか?」について書いておこうと思います
以前、雑誌「ダ・カーポ」が芥川賞、直木賞の特集を企画し、その中で「なぜ、村上春樹は芥川賞を逃したか?」について書いていました
1979年に「風の歌を聴け」、1980年には「一九七三年のピンボール」で芥川賞候補としてノミネートされましたが、選考委員のウケが悪く受賞には至りませんでした
ちなみに1979年上半期の芥川賞は「やまあいの煙」で重兼芳子、「愚者の夜」で青野聰が受賞しています。いまでは、「重兼芳子。誰だ、それ?」と思う人が大半でしょう
1980年上半期の芥川賞は該当者なしです
選考委員の見識を疑うべきなのか、村上春樹の初期作品にはそれだけの価値がなかったと言うべきなのか、見方はさまざまだと思います
が、この「風の歌を聴け」と「一九七三年のピンボール」は自分の好きな小説ですし、この初期の作品があったからこそ、いまでも村上春樹の小説を読み続けているわけで、価値がないという見方には納得できません
当時、自分は村上春樹がどのような作家であるかも知らず、文壇でどう評価を得ているのかも知らずにこれらの作品を読み、ただ素直に「面白い」と思いました
これよりも前、村上龍の「限りなく透明に近いブルー」が芥川賞を受賞し、社会現象を巻き起こしています。それに比べる、村上春樹に対して芥川賞の選考委員が「インパクトが薄い」と感じた可能性はあるのでしょうが
もちろん賞は巡り合わせにも左右されますし、芥川賞を逃した件が日本の現代文学史の汚点だとか、疑惑と騒ぐつもりはありません。ただ、作家や評論家として名のある選考委員の見識も「この程度のもの」と限界を示しているとは言えるでしょう
要するに当時の選考委員たちは村上春樹のこれら初期作品に、小説の可能性を見出せなかったのだ、と
日本文学の停滞が叫ばれて久しいのですが、小説を書く側の技量が問題視されるのは当然ですが、各種文学賞の選考に関わる人達が目利きとして有能かどうかも問われるべきだと思います

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