闇サイト強盗殺人事件 控訴審で心理鑑定を証拠採用

2007年8月、帰宅途中の名古屋市の派遣社員、磯谷利恵さんを拉致し金を奪った上に殺害した「闇サイト強盗殺人事件」の控訴審が始まっています
事件のまとめは以下のウェッブサイトを御覧ください


弁護側は心理鑑定の結果を証拠として提出し、2人の被告の減刑を主張しています



心理鑑定という名称は聞きなれないものかもしれません。精神鑑定が主に犯行時の責任能力の有無(端的に言えば精神疾患であるかないか)の判断を中心とするものであるのに対し、心理鑑定は犯行に関わった際の心理的な力動(どのような意図をもって犯行を行ったのか、その役割を巡る主従の別、性格的な負因や特徴)といった部分を明らかにする目的があります
今回の裁判では3人の被告のうち、若い女性を拉致して強盗をしようと提案した神田司被告は死刑が確定しています
川岸被告は「闇の職業案内所」で犯罪者仲間を募った人物であり、形式上は主犯格とされますが、警察に自首したため一審では無期懲役の判決が出ています。弁護側の主張としては闇サイトで犯罪者仲間を募った事実は認めつつも、実際の犯行を提案したのは神田被告で、川岸被告は追従的な立場であり主犯格ではないとしています
心理鑑定では軽度の知的障害を指摘しており、「(川岸被告)は物事全体を理解する力や現実を吟味する力が弱い」と弁護側の主張に沿う意見を述べています
3人目の堀慶末被告についても心理鑑定では「自己主張するよりも同調する傾向や受動的な態度が強い」とし、「殺害は場当たり的で直前まで意図していなかった」と述べています
控訴審に登場していない神田被告を除いて、2人の被告とも追従的に犯行に加担したのであり、犯行は計画的なものではなかったと言いたいようです
本当にそうなのでしょうか?
一審の裁判では3人の被告が互いに相手に責任を押し付けあう醜態をさらしています
醜態という表現が不適切ならば、無責任な態度と言うべきでしょうか
心理鑑定書そのものを読んでいないので一般論として述べますが、「追従的な性格だから主犯ではない」との主張は根拠が弱く説得力がありません
もちろん心理鑑定ではそんな稚拙な論理を展開しているとは思いませんが
「金を奪う」という合意の上で追従的な性格の人間が集まったとしても、他人に対する見栄から大胆な提言をしたり、豪胆な言動を誇示しようとする可能性はあります。リーダーシップなどなくても他者に対して支配的に振舞ったり、仕切ろうとする人間がいるのを我々は体験的に知っています
つまり端的に言えば、ヘタレでも仲間がそれ以上のヘタレであれば強盗団のリーダーになる可能性はあるのです
この辺りの3人の被告の関係を心理鑑定でどう説明しているのか、知りたいところです
中学生のツッパリグループのリーダーが、仲間の前では虚勢を張り大胆な行動を誇示していますが、仲間から切り離してしまうと優柔不断で案外小心者だったりします。過去にはいじめられっ子で、軽度の知的障害を有していた…という場合もあります。おそよリーダーらしからぬ背景をしょっているのですが、そんなこどもでもツッパリグループの頭になるケースはあるのです
そもそも仕事帰りのOLを夜道で襲っても大金を得られるはずなどないわけで、犯行そのものはずさんです。しかし、「闇の職業案内所」で犯罪者仲間を募集し、あるいはそれに加担するところからして十分に計画的な犯行と言えます
ずさんな犯行であるのは被告3人が「バカだから」であって、計画性がなかったからではありません。バカな犯行計画しか建てられなかっただけの話です
控訴審の結果がどうなるのか、経過を見守りたいと思います

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