アニメーションの輸入を制限する中国

レコードチャイナの配信記事によれば、中国の国家ラジオ映画テレビ総局宣伝管理課の金徳龍課長は、「ここ6年で中国製アニメの生産量は40倍以上になったとの飛躍的成長を報告。中国は国際協力を積極的に推進していくが、海外アニメの大量輸入には反対する」と発言したそうです
さらに、「輸入するアニメは国際的水準を備えていること、輸出国の優秀な伝統と文化を背景としていることが条件で、中国のアニメ産業がその長所を吸収できるものでなければならない」と主張したのだとか


要するにパクる価値のあるアニメーションしか輸入しない、と言うのでしょうか?
もちろん日本のアニメーションと、ディズニーやピクサーのようなアメリカのアニメーションとでは方法論が異なり、その表現技法や語り口に大きな違いがあります
中国はどちらを目指すのでしょうか?
あるいはどちらでもない中国独自の道を探求するのでしょうか(輸出で儲けるつもりなので、それはないと思いますが)
例えば2006年に作られたアニメーション「Jinsha」ですが、背景画は「もののけ姫」のような世界を描こうとしているのが分かります
しかし、見て分かるように背景画(静止画)の上に動く人物(動画)を貼り付けただけ、という稚拙なアニメーションであり、その昔日本のセル画アニメーションが労力を省くためにやった手法そのままです
静止画で見せるのも悪くはないのですが、そのためには1コマの絵で視聴者を魅了するだけの画力が必要です
残念ながらアニメーターにはそれだけの画力が感じられません
人物の動きそのものも単調すぎます。本来は見せ場であるはずの闘いの場面は、複雑な動きを必要とするためこれを極力単純化し、手間を省こうとしているのが分かります
カッコいいアクションシーンを描くだけの構成力も画力もないのでしょう
出来の悪い紙芝居と言えば酷かもしれませんが、これで「日本のアニメーションと同等のクオリティに到達した」などと言うなら失笑ものです


2006年のアニメーション「Jinsha」



アクションというなら、格闘ゲームのCGをそのままアニメーションにした「秦时明月」があります。プレイステーションのゲームを見ているような動きです

秦时明月


ゲームに馴染んでいるこどもたちはこの画面に何の抵抗もないのでしょうが、自分はダメです。とても見ていられません
1つ1つのカットがこんな表現でよいのか、疑問だらけです
アニメーターはCGで絵をグリグリ動かすのに夢中で、カットの割り振りや全体のシーンとしてのつながりなどを考慮しないまま描いているのでしょう
演出担当者がきちんと絵コンテを切り、1つのカットごとにどう見せるか検討しているのかさえ疑問です
例えば初代の「ガンダム」は古い作品なので動画のクオリティはひどいものですが、それを補って余りあるほどモビルスーツを描いた1コマは迫力があり、カッコいいのです
画力が中国のアニメーターとは比べものにならないくらい高いため、あの動画でも繰り返し鑑賞にたえられます
さらに動画の拙さを演出で補い、物語に深みを与えています。単純な戦闘シーンにせず、そこにアムロの回想を挿入するなどして、時間や空間を超えた物語の奥行きを表現しようとします
そんな演出上の着想、工夫といったものが中国のアニメーションからは微塵も感じられません
中国のアニメーターは動画ソフトの扱いには習熟しているのでしょうが、世界のさまざまな映画を見てその表現方法、演出の妙技を学んではいないのでしょう
絵やキャラクターをパクることに夢中で、演出方法までは真似できないというのはいかにも底が浅く感じられます
何十年も、何百本ものアニメーションを制作してきた日本の、練り上げられた方法論を中国はまだまだ理解できていないと思われます

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