豊川引き篭もり殺人を考える4 殺人未遂のケースは多発?

前回は引き篭もりが全国で100万人から200万人いる中で、殺人事件にまで至るケースは決して多くない、と書きました
ところが産経新聞の記事では、「殺人未遂に止まったケースは表に出ないだけで、相当数発生している」と指摘しています


どうなのでしょうか?
引き篭もりに限らず、家庭内暴力とされる事例でも親に暴力を振るったり、刃物を持って暴れる場合があります。ただ、それを「殺人未遂」として扱うかどうかは微妙なところです
確かに「ぶっ殺してやる」と叫び、鬼のように暴れたりするわけで、親は身の危険を感じるかもしれません
しかし、家庭内暴力による暴行、傷害で青少年が逮捕された、という報道がどれだけあったでしょうか?
ましてや殺人未遂となると、もっと少ないように思います(家庭内暴力ではなく、金銭トラブルのような大人の事情による家庭内殺人・殺人未遂はたびたび発生しますが)
警察がどこまでの行為で殺人未遂と判断するのか、一定の基準があるのでしょう
しかし、そんな基準について議論することが実りある行為だとは思えませんので、引き篭もりによる殺人未遂の件数をあれこれ詮索するのは時間の無駄かもしれません
もちろん、警察には民事不介入という原則があり、家庭内のトラブルに直接関わろうとしてこなかったという背景が過去にはあります
同様に、幼児への虐待についても警察は介入しませんでした
現在では警察の方針も変わり、家庭内の問題であっても事件性があると考えられる場合は積極的に介入するよう変化しています
話が逸れてしまいましたので、戻します
産経新聞の中で引き篭もり問題の専門家とされる方が問題提起する形で、「殺人未遂に止まっているケースは数十倍ある」と指摘しているのですが、これは警鐘を鳴らす目的での発言でしょう
実際に殺人未遂と認められるような緊迫したケースを多数、見聞しているからこその発言だと思います。ですが、専門家といえども全国津々浦々の引き篭もり家庭の事情を把握しているわけではありませんので、総数がどれくらいかというのは推測でしかありません
その推測の信憑性をとやかく言うつもりはないので、話はここまでです
記事の中で専門家である井出草平氏(社会学)は、「警察は家庭内暴力の専門家ではないので助言を求めに行くところとしては適していない。家族は、精神保健福祉センターへ相談するべきだった」と述べています
ですが、世間一般の人が地域の精神保健福祉センター(自治体によって名称が異なりますが)を相談窓口として思い浮かべる可能性は皆無でしょう
民生委員に相談しても、精神保健福祉センターへ行くよう助言が得られるかどうか疑問であり、1番には警察、2番目には精神科の病院を挙げるのではないでしょうか?
地方自治体、民間団体による各種相談窓口はあるのですが、今ひとつ認知されていないのが現実です
自治体が広報紙を通じてアピールしたり、民生委員のような地域ボランティアの人脈を利用するなどして、こうした相談窓口が知れ渡るようになるとよいのですが
引き篭もりの息子や娘を持つ親が高齢化しつつある現在、親御さんの方はインターネットを使用しない(使えない)場合があるため、インターネットによる情報提供はあまり有効ではありません
引き篭もっている人たちに対する働きかけの方法として、インターネットを利用する手はありそうです。またそれは別の機会に考えます

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