手塚治虫文化賞 山田芳裕作「へうげもの」
第14回手塚治虫文化賞の発表があり、マンガ大賞には山田芳裕作の「へうげもの」が選ばれたと報道されています
「へうげもの」とは型破りなもの、奇抜なものという意味です。戦国時代の武将で茶人でもあった古田織部を描いたマンガです
濃い緑色の釉薬をざっくりとかけた「織部」と呼ばれる器の数々をプロデュースした人物であり、歪みのある沓掛茶碗のような独自の形で美を表現した芸術家です
戦国時代を舞台にしたマンガならば戦乱を勝ち抜く武将の闘いをテーマにするところでしょうが、茶人で陶芸家でもあった古田織部に光を当てるという作者の意向に驚かされます。実に渋い趣向です
さらにこの異色の作品を読み、支持している日本の読者が大勢いる事実にも、新鮮な驚きを感じます
もちろん日本のマンガはその描く対称が幅広く、恋愛ドラマやスポーツ根性ものに限らず、料理から音楽など多用な世界を描いてきました。ビジネスの世界を描いたサラリーマン物もあれば、奇抜なギャグマンガもあります
過去に当ブログで、「日本のマンガの時代は終わった。これからは(韓国の)マンファの時代だ」などという報道記事を取り上げたりしましたが、日本のマンガの題材の多用さ、表現のあくなき追及という探究心に韓国が追いつく可能性は皆無でしょう
世界の中でこのようなマンガ文化を展開させ、さらにその彼方を目指している国は日本だけです
1人の漫画家が独自の境地を開拓したとしても、そこに安住せず、さらに新たな世界を目指すのも日本のマンガの特徴でしょう(そうしなければ漫画家として生き残れないという競争の厳しさもあるわけですが)
「ハチミツとクローバー」で一世を風靡した羽海野チカは、「3月のライオン」で将棋に打ちこむ青年を描き、新たな世界を探求しているように見えます
「のだめカンタービレ」を終えた二ノ宮知子も、音楽とは異なる世界を描くのでしょう
漫画家の意欲と、読者の貪欲さが次なる話題作、注目作を生み出すのだと思います
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「日本漫画の時代は終わった」と報じたメディア