佐世保小6殺害事件 事件の意味を読む
前回、2004年6月に発生した佐世保市での小学6年生女子児童による殺人を取り上げましたが、事件から時間も経過しており、印象が薄れてしまっている感があります
特定の事件に執着し、繰り返し語ろうとする行為は一般に「粘着している」と蔑まれるのですが、それを承知でもう一度踏み込んでみたいと思います
事件の概要についてはまとめのページがあるのでそちらをご覧ください
インターネットをあれこれ検索していて、国際大学GLOCOMの研究員が書いた文章を見つけましたのでこれを叩き台にしたいと思います
佐世保小6女児殺害事件をどう読むか
筆者は少年問題の専門家ではなく、いわゆるIT分野の研究者です
文章の中で佐世保の事件について、いかにも悪そうな連中がやる事件とは違って一見学校生活に適応しているかに見えるこどもが殺人を犯したことへの驚きと、報道される限り家庭や家族に目立った問題もなく、犯行の原因として特定できる事案が見当たらないことへの戸惑いが表明されています
こうした反応は、当時事件のニュースに接した人が誰しも抱いたものだったと思います
事件の直接のきっかけはインターネットのチャットで悪口を書かれたため、と加害児童が供述しており、そこから「こどもにインターネットを利用させるのは問題だ。規制すべきだ」との主張が飛び出すのですが、これは事件の本質、事件の意味と関係ありませんので割愛します
同じ小学校に通う同級生が加害者であり、被害者であったわけですから、インターネットのチャットを利用していなくても遅かれ早かれケンカになった可能性はありますし、刃物を使った傷害事件に至った可能性があると考えられるからです
事件の背景として容姿のことを悪く言われたなど、加害者と被害者の間にいさかいがあったのは事実ですが、世間一般の反応として「その程度の理由で人を殺すのはおかしい」とされ、殺害の動機は不明だと受け止める人が多かったのです
さて、加害児童が映画「バトル・ロワイヤル」に熱中し、繰り返し見ていたと報道されています。離島に隔離された生徒同士が武器を手に殺し合うというストーリーの映画です。この映画と加害児童の関係は前に書いていますのでそちらを見てくだい
こどもは平々凡々と毎日を過ごし、屈託なく笑っているものだと決めつけるのはあまりに一方的な判断です
幼児でも心の中には嵐を抱えており、さまざざな感情を抱き、誰かを憎み、恐れ、憧れ、待ち望み、蔑んだりしています。大人が鈍感であるため、そうした心情の変化に気がつかないだけなのです
小学6年生の児童の中にも嵐は存在し、抑えきれないほどの憎悪、あるいは恐怖が内奥から湧き上がり、刃物を振るったと考えられます。たとえそのきっかけがどれほど些細なものであったとしても、彼女自身は「やらなければやられる」と感じたのでしょう
「些細な理由で人を殺すはずがない」との判断は大人の貧しい発想ゆえです。大人の側の理屈だけで物事を見ている限り、こどもたちの心の中の嵐は読み取れません
「殺すか、でなければ殺される」という二者択一の「バトル・ロワイヤル」の世界に自分の置き、「殺すしかない」という選択をした結果が本件です
もし彼女が、「殺されることもなく、殺すこともなく、仲間とともにこの絶望的な状況から抜け出そう」という第三の選択を思いつくことができたなら、物語は違った結末を迎えられたでしょう
それは彼女が家庭内で、「親との対立か、親への服従か」という二者択一的な思考ではなく、親子で妥協し譲り合うことで第三の選択を模索する体験があれば可能であったかもしれません
精神分析は幼児といえどもその心の内にはさまざまな物語を抱いていると考え、それを読み取ろうとする技法です
(関連記事)
小学六年生女子児童による殺人事件
小学六年生女子児童による殺人事件 2
小学六年生女子児童による殺人事件 3
小学六年生女子児童による殺人事件 4
小学六年生女子児童による殺人事件 5
小学六年生女子児童による殺人事件 6
小学六年女子児童による殺人 7
佐世保小6殺害 事件報告書を人権侵害だと申し立て
佐世保小6殺人から10年を問うノンフィクション
女子高生が同級生をナイフで刺す 高野山高校
16歳少女を殺人、死体遺棄で逮捕
広島少女遺棄事件 7人で集団暴行か?
佐世保高1女子殺害事件を考える1 マンションに独り暮し
佐世保高1女子殺害事件を考える2 快楽殺人説
佐世保高1女子殺害を考える3 「命の教育」とは
佐世保高1女子殺害事件を考える4 サインを見逃す
佐世保高1女子殺害事件を考える5 父親の再婚
佐世保高1女子殺害事件を考える6 精神鑑定
佐世保高1女子殺害事件を考える7 父親の自殺
佐世保高1女子殺害事件を考える8 再逮捕の狙い
佐世保高1女子殺害事件を考える9 児童相談所長ら懲戒処分
佐世保高1女子殺害事件を考える10 家裁の判断は?
佐世保高1女子殺害事件を考える11 有識者の見解
和歌山小5刺殺事件を考える1 引きこもりの容疑者
実母、祖母を殺害した15歳逮捕 神奈川
山形マット殺人事件 賠償金支払わず放置
名古屋大女学生殺人を考える7 無期懲役求刑