ポジティブ思考では解決しない現実

ヤフーの「月曜家族相談室」に、「私の親は放任主義で、私にご飯も作ってくれません。毎週日曜日は朝から晩までパチンコに行っています」との相談がありました
前回、雑誌「プレジデント」の記事で、「驚くほど効く『心のギアチェンジ』~前向きな脳をつくる『かもの法則』」を紹介し、ポジティブ思考が駄目な理由を挙げました

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この相談に対し、「自分でご飯を作ればいい」とか、本人の自立を促す助言が寄せられていますが、それが問題の解決に繋がるのかは疑問です
確かに相談を持ちかけてきた人の中にある「甘え」を指摘することはできますが、本当に求めている助言は「いかに親に甘えるか」という方法論ではありませんし、「ご飯の作り方」でもありません
ましてや「そんな親がいるからこそあなたは自立できるはず。前向きに受けとめ、自分のことは自分でやれるようになるはず」というポジティブ思考でもありません
パチンコというくだらないギャンブルにどっぷりはまっている親の生活態度を改めさせるのが第一であり、それが駄目なら親から離れて自立自活する方法でしょう
精神分析の側から相談者の内奥にある問題を考えると、親への憎悪や苛立ちは自分が十分に愛されていない感じているところにあります
もちろん「親から愛されたい」という欲求は誰にもありますし、母親の作る料理は愛情そのものです。母親が食事を作ってくれないという不満は、母親から愛されていないという不満であり、不安です
その不安は、「愛されない自分」への怒りや自責の念に発展し、リストカットなどの自傷行為に走ったり、「どうなってもいい」との思いから家出や不純異性交遊、援助交際に走る女の子もいます
根底にあるのは「愛されない自分」への怒りであったり、「愛されるに値しない自分」に対する自己処罰であったりします
「愛されない自分」でありながらも「愛されたい」との思いを捨てきれない葛藤が、親への憎悪となったり依存となったり、自己処罰になったりと、さまざまな行動となり表出すると考えます
家出、あるいは彼氏を作って同棲という一見自立のように見える行動にも、以上のような内面の葛藤が含まれており、危うさがつきまといます(彼氏ができてラブラブだから十分に満たされるとは必ずしも言えないからです)
「パチンコにはまってこどもを省みない親」がいるからこそ、前向きに、ポジティブに行きましょうと助言して、問題が解決するとは到底思えないのです
「愛されない自分」あるいは「愛されるに値しない自分」などというネガティブ思考は人生にとってマイナスだから捨てましょう、と言うかもしれませんが、こうした葛藤は無意識の中で繰り広げられるものであり、意識的にこれを否定し、捨て去るなど簡単にはできません
精神分析ではこうした無意識の中で繰り広げられる葛藤を呼び覚まし、言語化させ(本人の口から語らせる)、意識上に引き出して検討させる方法です
現実的な対応としては親のパチンコ三昧な生活を改めさせるとともに、相談者の心の内にある葛藤を解消ないし緩和させるケアの両方が必要だと考えます

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