佐世保小6殺害 事件報告書を人権侵害だと申し立て

2004年に佐世保市で起きた小学6年生女子児童による同級生殺害事件について、長崎県と佐世保市の教育委員会が報告書をまとめました
その報告書で、「加害児童(犯人)が同級生の男子児童の行為に腹を立て、乱暴な言葉遣いを示した」と事件の予兆であるかのように決め付けたことが、男子児童の人権を侵害する行為だとしてトラブルになっています


記事だけではよく分からない話です。教育委員会のまとめた報告書の全文に眼を通せればよいのですが
単に文章表現の問題なのか、それとも教育委員会の見解そのものに問題があるのか不明です
また、弁護士会が「(教育委員会)は犯人捜しや事件をせんさくする組織ではない。申し立てた子どもの成長発達権を侵害したのは明白で、責任は重い」と指摘しているのも妙な話です
教育委員会は事件が教育現場で起きたのですから、事件の背景・要因・因果関係について解明し、市民や県民に報告する責任があります。義務教育を執行する機関として国民の付託に応える責任がある以上、事件についても報告する義務があるのは当然です
その報告書の中で、加害児童の問題行動を説明するエピソードの1つとして、男子児童とのトラブルを挙げたのでしょう。これが人権侵害だという理屈は理解できません
ましてや弁護士会の「(教育委員会は)事件を詮索する組織ではない」という理屈はもっと理解できません。「教育委員会は何もするな。弁護士会にまかせろ」とでも言いたいのでしょうか?
さて久し振りにこの事件についてインターネットで検索をしたところ、気になる意見を見つけましたのでついでに取り上げます(こちらが本題です)
「良い国日本の再興」 日本戦略の研究会という保守派の提言を集めたホームページでこの佐世保の殺人事件を取り上げ、対策としての提言が掲げられています


キャサリン・クーという人が佐世保の事件は「個を重視した教育の失敗の結果」だと決め付け、外部指導員(教師ではない人間)による2ヶ月間の合宿生活をこどもたちに義務付けるべきと主張しています
何を目的にどのような手法で実施するか定かではない合宿生活で、こどもたちに対して何ができるのでしょうか?
家庭から切り離し、スパルタ式の訓練をこどもたちを鍛えれば非行はなくなる、と考えているなら笑うしかありません
2ヶ月の合宿訓練のカリキュラムも不明で、どのような思想・技能、知識を有するかも不明な外部指導員(しょせん素人です)にそのような指導が期待できるわけもありません
世の中にはこうした考えを持つ人は案外、多くいます。徴兵制を復活させて若者を軍隊で鍛えるべきだ、と主張する人たちと同類でしょう
佐世保の事件を例に挙げると、甘やかして育てた結果、殺人事件を起こしたとは考えにくいのです。むしろ加害児童は親にうまく甘えることができず、表面的に「手のかからないいい子」を演じざるを得なかったため、情緒面での発達に問題があったと言えます
彼女が発育過程でしっかりと親に甘え、親とケンカし、仲直りするというプロセスを経て成長していれば違った結果になったと思います
「こどもの甘えが悪い」などと決めつける思考は時代遅れにもほどがあります
ドナルド・ウィニコットの著作を読んで勉強してもらいたいものです

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