警察庁長官銃撃事件時効成立に思う その2
新聞各紙は警察庁長官銃撃事件が未解決のまま時効を迎えた件と、その後行われた警察側の「オウム真理教による犯行だった」と名指しする会見を取り上げ、批判しています。「犯人は逮捕できなかったが、ここまで真相に迫っていたのだ」とアピールする異例の会見を、警察の独り善がりだと指摘する見解が見られます
一般の方は理解しにくいと思いますが、警察部内には幾つもの組織に縦割りに存在しており、仲が悪いので有名です。その代表が警備部と刑事部の対立です
刑事事件の捜査は通常、刑事部が担当します。しかし、警察の予算や人員を握り、警察庁長官という警察トップを輩出するのは警備部の方で、「警備部にあらずば人にあらず」と言われるくらい権勢を誇っています。首相や閣僚の身辺警護を勤める関係から、政治家とも密接な関係があり、内閣官房に警備部の人間を送り込むなど行政にも食い込んでいます
他方で、予算や人員の面でも恵まれない立場にあるのが公安部です。取り扱う事件の特殊性から少数精鋭と言えば聞こえはよいのですが、陽の当たらない部署です
今回の警察庁長官銃撃事件はこの公安部が捜査の主導権を握っていました
結果として在家信者だった巡査長の証言に振り回され、捜査は暗礁に乗り上げてしまったのは各メディアが報道しているとおりです
また、警視庁の現職警官が事件に関与していたため、当時の警視総監(東京都を所管する警察のトップ)が辞職に追い込まれ、警視庁公安部長が更迭されています
当時の警視総監は警備部畑の人物で、次期警察庁長官の有力候補と見られていました。山梨県にあった上九一色村に大規模な強制捜査に踏み切るなど、その英断を高く評価される向きもありましたが、その人物が長官銃撃事件の責任を負わされ辞職に追い込まれたのですから、警備部は面目を潰された格好になったわけです
こうして警察庁長官銃撃事件は警察組織内の利害関係にも大きな揺さぶりとなり、各部署間の根深い確執をさらに煽る結果となります
公安部が独善的な捜査に突き進み、犯人を逮捕し損ねた背景にも「公安の意地」と言うべき「組織の論理」が優先された結果ではないかと思われます
当時、オウム真理教を巡る事件の捜査は刑事部が担当していました。長官銃撃事件だけは「要人に対するテロ」と扱い、公安部が捜査を担います
ところが公安部は多くの捜査情報を握っている刑事部と連携し情報交換するのではなく、あくまで公安部主導による犯人逮捕に固執した結果、失敗したのだという話です
「オウム真理教の犯行だった」とする昨日の記者会見も公安部長がやっており、公安部による公安部のためのパフォーマンスと言われても仕方のないところです
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