福袋売れ行き好調と精神分析: 夾竹桃日記

2010年01月05日

福袋売れ行き好調と精神分析

新年の話題として、各地のデパートでは福袋販売に力を入れているようです
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100103-00000076-mailo-l22

数年前ですがニュースで、「早朝から並んでいたのに買えなかった。どうしてくれるん

だ」とデパート店員に食ってかかる男性客の映像を見ました

福袋を求める客と一般の買い物客との混乱を避けるため、入り口を別にした結果混

乱が生じ、並んでいたのに買えなかったとキレた客がいたようです

そこまで人々を夢中にさせる福袋とは何なのでしょうか？

精神分析とは端的に言うと欲望の在り処を尋ねるものです

この場合、福袋は人々の欲望の対象であり、人をそれを手に入れたいと早朝から列

をつくります

しかし、福袋は「何が入っているのか分からない」からこそ、人々の想像を駆り立て期

待を増幅させる商品です。つまり袋の中身＝欲望の対象は謎のままなのです

ですが、福袋の中に欲望の対象（自分の欲しいもの）が入っているとは限りません

にも関わらず人々を惹きつけるのは、福袋の中身そのものが重要だからではないか

らだと考えられます

つまり、そこに己の欲するものがあるとの期待、想像力を刺激する「　　」があると思う

ことこそ重要なのです

（「　　」の中はラカン流に言えば空無の記号とでも表現すべきでしょうか）

最近は中身をあらかじめ公開している福袋もありますが、それでは興ざめです

また、インターネットで予約販売されている福袋もダメです

快楽を求める人々は、快楽を手にするという結果を重視しているのではなく、快楽に

至るまでのプロセスが重要なのです

どのデパートを狙うか考えるところから始まり、早朝に家を出て行列の中で寒さに震

え、目当ての福袋のためエスカレーターを駈け上がって奪い合い、やっとの思いで手

にするという一連のプロセスこそが重要であり、意味があるのです

欲望に刺激され、欲望に駆り立てられる時間が長く困難なものであるほど、福袋を開

ける瞬間まで興奮を味わえるためです

子猫の一番好きな遊びは狩りを模したものです。獲物を狩るためのプロセスそのもの

を子猫は遊びとして楽しみ、興奮し、夢中になります。そして狩り獲った獲物そのもの

には興味を示さず、飼い主に遊びの続きを要求します

福袋は野生を失った人間を駆り立てる一種の狩りなのでしょう