島根女子大生遺棄事件を考える28 劇場型犯罪

被害者平岡都さんの靴は拉致されたときに脱げた可能性がある、と毎日新聞が報じています。つまり靴が発見された場所こそ、平岡さんが連れ去られた現場と考えられるのです。しかし、それがすぐに犯人逮捕へ結びつくわけでもありません


前回は強迫神経症をモデルとして犯人の行動を考えてみました
今度の犯行で犯人が己を駆り立てる衝動を沈静化させることができたなら、新たな犯行は当面起こりえない、という仮説を述べました
あくまでも仮説であり、それを裏付ける材料はいまのところありません
さて、今日はメディアの報道について取り上げます。タイトルにも書いた「劇場型犯罪」との指摘についてです
「劇場型犯罪」という表現があること自体を批判するつもりはないのですが、この事件が本当に劇場型犯罪と呼ばれる種類のものかどうかはよく吟味すべきでしょう
ステージの上には被害者の遺体があるだけで、犯人の姿はありません。警察への挑戦状を読み上げるナレーションの声もありません
犯人の息遣いも、気配も漂ってはきません
これを劇場型犯罪だと断定できるのでしょうか。まあ、そうした専門用語を使ってみたい人もメディアの中にはいるのだとは思いますが
一時期、メディアは小泉政権を「ワイドショー政治」とか「小泉劇場」と呼んでいましたが、自分にはメディアが政治をワイドショー化しているようにしか見えませんでした
犯罪報道も同じで、「国民の知る権利」を大義名分にしていますが、それはワイドショー化する行為に他なりません。その意味で、「劇場型犯罪」を切望しているのはメディアの側なのでしょう
報道の在り方が問われる事例は山ほどありますが、それでメディアのあり方が変わったりはしません。いっそ、「劇場型犯罪報道」と名付けるべきでしょう
劇場型犯罪報道は被害者遺族を追い詰め、また加害者側の家族も晒し者にします
宮崎勤は連続幼女殺害で死刑が執行されましたが、彼の家族のたどった運命は過酷なものでした。父親は自殺し、妹は婚約を解消され、家族は離散しました


もちろん宮崎勤本人には、家族や親戚縁者の苦しみを背負うだけの覚悟も自覚もありませんし、考えもしなかったでしょう
そして今回の事件の犯人も、人の命を弄んだ結果、どれだけ周囲の人を苦しめる事態を招くのか想像したこともないと思われます
この事件についてはブログで取り上げた数も増えましたので、直近のリンクだけ掲げておきます

島根女子大生遺棄事件を考える23 犯罪心理学者の見解
島根女子大生遺棄事件を考える24 犯人の自己顕示欲
島根女子大生遺棄事件を考える25 むき出しの欲望
島根女子大生遺棄事件を考える26 捜査員・ブロガーの見解だ
島根女子大生遺棄事件を考える27 犯人はいま
島根女子大生遺棄事件を考える29 思い込みの誤り
島根女子大生遺棄事件を考える30 犯人家族の苦悩
島根女子大生遺棄事件を考える31 屍姦という行為
島根女子大生遺棄事件を考える32 情報の整理を
島根女子大生遺棄事件を考える42 容疑者死亡で送検
島根女子大生遺棄事件を考える43 矢野容疑者のプロフィール
上記の記事より過去のものは以下のリンクからたどってください


裁判員と「犯罪報道の犯罪」
昭和堂
浅野 健一

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