島根女子大生遺棄事件を考える27 犯人はいま
島根の女子大生殺害遺棄事件は解決を見ないまま年を越しました。警察があらためて事件解決への強い意欲を示していると報じられています
島根女子大生遺棄 2カ月、情報4百件超
前回は当ブログでテレビのワイドショーのコメンテーターのテリー伊藤が、「犯人は今月末(12月末)にもう一度アクションを起こすかもしれない」とコメントした件に触れましたが、犯人は何の行動も見せませんでした
もちろんテリー伊藤には何の見識もなく、ただ自分の願望(犯人はそのような人物であってほしい)を口にしただけなので、それを揶揄するつもりはありません
快楽殺人の犯人なら同じ手口で次の犯行に走るはず、と考えた人も大勢います
あるいは性犯罪で逮捕される人間の中には、刑務所を出てからも同じく性犯罪を繰り返す人間がいるのも知られていますから、今回の事件の犯人も快楽を求めて次の犯行に手を染めると考えるのも当然です
もし今回の事件が怨恨による殺人なら恨みの対象となる人物を殺害し、満足したため、新たな犯行はないと考えられます
ですが、犯人に動きがないから怨恨による殺人だと決め付けるのは早すぎます
快楽殺人でも矢継ぎ早に事件を起こすわけではなく、半年くらい間隔が空いても不思議はありません
あるいは今回の事件で犯人を駆り立てていた衝動を鎮めることができたなら、当面の間は事件は起こさない可能性もあります。強迫神経症の治療モデルからすれば、強迫行動(手を洗うのを止められない、食べ物を嘔吐するなど)へと駆り立てていた原因を明らかにし、自分の行動の意味を理解したならば強迫同行は沈静化もしくは消失すると考えられます
つまり犯人を殺人や遺体の解体へと駆り立てていた衝動について、犯人が今回の行為の意味を理解し納得したのであれば、次なる事件は起こさないかもしれないと推測できるわけです(そうだと断定できる材料は何もありませんので、あくまで仮の話です。それに犯人が強迫神経症だと断定できるものではありません)
快楽殺人の犯人の行動傾向を類型化し、それに基づいて予想する方法は以前にもプロファイリングに関連して述べたところですが、犯人の抱える個別の事情や資質、性癖といった内面に踏み込まず、外部に現れる行動だけを追いかけるやり方には危うさを感じます
人間の行動には必ず本人の意図や、あるいは本人の意図せざる内側からの衝動があるはずで、それを問わずに行動のみを論じるのは片手落ちだと思うからです
行動科学と呼ばれる理論の中には確かに個人の内面を重視せず、その行動を重視せよとする考えもあるのです
そうした立場とまったく逆に位置するのが精神分析でしょう
というわけで、外部に表出する行動よりも犯人の内面での力動を重視すべきだ、というのが自分の立場です
余談ですが、強迫神経症への対処法としては精神分析療法以外にも行動療法があります
この事件についてはブログで取り上げた数も増えましたので、直近のリンクだけ掲げておきます
島根女子大生遺棄事件を考える23 犯罪心理学者の見解
島根女子大生遺棄事件を考える24 犯人の自己顕示欲
島根女子大生遺棄事件を考える25 むき出しの欲望
島根女子大生遺棄事件を考える26 捜査員・ブロガーの見解だ
島根女子大生遺棄事件を考える28 劇場型犯罪
島根女子大生遺棄事件を考える29 思い込みの誤り
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