島根女子大生遺棄事件を考える23 犯罪心理学者の見解
産経新聞の配信記事で、「プロファイリング捜査の経験がある関西国際大の桐生正幸教授(49)=犯罪心理学=は『自己顕示欲があり、知的レベルも高い20歳代の男』」という犯人像を挙げています
記事に拠れば、「昭和22年から平成8年までの50年間では、切断された痕がある殺人事件で犯人が逮捕されたものは77件。うち74件の主犯格は男で、遺体を切断した理由は、運搬のためや証拠隠滅が9割以上を占める」とあります
ただそれは当時の捜査から言える話であり、犯人たちが死体へのフェティシズムを有していたかかどうかまでは調べていないでしょう
遺体損壊の目的を「持ち運ぶためだった」と犯人が供述すれば、捜査側もそれ以上は追及しないと思われます
つまり遺体をバラバラにして弄び、性的興奮を味わう狙いがあったかどうかは確認していないと考えられるわけです
統計による推測は有効ですが、そのベースとなるデータがいかなるものかを吟味してかからないと、的外れな結論に終わる危険があります
「被害者の自宅から2キロ以上離れた場所に遺棄されていた事例では、犯人は被害者と面識がないか関係が希薄な人物に限られ、動機はわいせつ目的だった」との指摘も過去のデータから導き出されたものですが、わいせつ目的の中身が何であるかが重要です
強制わいせつや強姦目的であるのと、被害者にたいする拷問や遺体へのフェティシズムという目的では事件の意味が大きく異なるためです
こうしたデータも上記のように犯人が「わいせつ目的でやった」と供述する限り、捜査員はその供述で満足してしまうでしょうから、犯人の本当の狙いは表に出ないままです
マクロ的な視点から犯罪の種類ごとにその特徴、傾向、犯人像を分析して導き出す手法は有効なのでしょうが、表からは見て取れない犯人の性癖や人格上の特質を無視るのは危うく感じられます
「家出を繰り返す少女」という記事で言及したことがありますが、一般には家出の理由として親への反発や遊興志向が強いなどの理由が公式に挙げられますが、個別に見れば「性的関係を迫る実父や義父から逃れるため」というケースも少なくないのです
家出を繰り返す少女
しかし警察がよほど立ち入って事情を聞かない限り、近親相姦の話題が明るみに出ることはありません。繰り返しますが、こうした「本当の意味」を問わない捜査から導き出されたデータを根拠に、統計的な手法で何がしかの結論を得たとしてもそれがすべてだとは言い切れないのです
年末も捜査本部は休むことなく捜査活動を継続するとあります。関係者の努力に敬意を示すとともに、被害者遺族の無念が少しでも晴れるよう犯人の検挙を祈念します
この事件についてはブログで取り上げた数も増えましたので、直近のリンクだけ掲げておきます
島根女子大生遺棄事件を考える19 プロファイラー起用
島根女子大生遺棄事件を考える20 正常と異常の境目
島根女子大生遺棄事件を考える21 陰謀説・サイコ説
島根女子大生遺棄事件を考える22 女性犯人説
上記の記事より過去のものは以下のリンクからたどってください
捜査心理ファイル―捜査官のための実戦的心理学講座 犯罪捜査と心理学のかけ橋 (Valiant Value Book Series)
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