元厚生次官殺傷事件を考える4 再度の精神鑑定要求

12月16日の公判では被告弁護側が起訴前に行われた精神鑑定の結果は信用できないと主張し、再度の精神鑑定を要求したと報道されています


弁護側が法廷戦術として自分たちの主張(犯行当時責任能力はなく罪は問えない)に反する精神鑑定を否定し、再度の精神鑑定を要求するケースは珍しくありません
前にも触れましたが精神鑑定には時間も費用もかかり(おそよ70万円から時には100万円以上)、それは結果として国民が負担しているのです
中には起訴前に検察が精神鑑定を行い責任能力ありの結論を得ていたのを、弁護側が精神鑑定に疑問を投げかけて再度精神鑑定を要求し、それでも責任能力ありとの結果が出て一審で有罪となったため、二審で弁護側がさらに精神鑑定を要求したケースもあります
前回、弁護人が証人として出廷した被害者遺族に「(小泉被告の)犯行動機は理解できますか?」との質問を繰り返したのを取り上げ、その意図が理解できないとブログに書きました
思うに弁護人は、「小泉被告の犯行動機とされるものは意味不明で、誰にも理解できない。つまり妄想に基づいた犯行であり、犯行時小泉被告には善悪を判断する能力がなかったから無罪とするべき」と主張するため、上記のような質問を繰り返していたのでしょう
その線で小泉被告の責任能力に問題はないとした起訴前の精神鑑定の結果を否定し、あらためて精神鑑定を要求したわけです
「被告は妄想性障害の可能性がある」と弁護人は述べています
つまり「妄想性人格障害」です
人格障害についてはさまざまな論争や考え方があり、話が長くなるので省略しますが、人格障害だと裁判で認定されながら「責任能力あり」として有罪判決が出た例は幾つもあります
人格障害で「責任能力なし」とされるには、社会生活が困難なくらい重篤な症状を呈していないと無理でしょう
小泉被告を巡る報道を見る限り、奇人変人ぶりを示すエピソードは多くありますが
弁護側の要求をばっさり退けるような判断は裁判官も避けるでしょうから、ここは弁護側の求めるとおり精神鑑定を行う決定をすると予想されます
鑑定の結果、「小泉被告は犯行当時妄想にとらわれ、善悪の判断が著しく減退した心神耗弱状態にあったと判断される」となれば弁護側は満足なのでしょう
善悪の判断ができない心神喪失状態なら罪に問えませんので無罪、心神耗弱状態なら罪を一等減じて(死刑を回避し)懲役20年くらいの判決かもしれません

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